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アーカイビングによって新たな価値を創造する~渋谷アーカイブ写真展~

【introduction】では、コンパッソが注目する企業や人を紹介しています。
今回紹介するのは、アーカイビングという手法を用いて新たな価値創造を提供しているCommons Archive Collective(コモンズ・アーカイブ・コレクティブ)の活動です。

2021年10月に開催した「渋谷公園通り写真展1977-1997」に続き、2023年11月6日から11月12日まで「渋谷アーカイブ写真展」が開催されました。

主催したのはCommons Archive Collective(コモンズ・アーカイブ・コレクティブ)という、美術大学出身の友人同士で立ちあげた団体です。

西武渋谷B館の8階催事場で開かれた写真展では、1960年代〜90年代までの渋谷の風景写真が300点展示されました。

展示作品中3分の2の写真は渋谷の服飾店「大西屋」の三代目、大西忠保氏が撮影したもので、何気ない日常の渋谷が記録されています。

私たちコンパッソ税理士法人も渋谷に本社を構えて50年近くが経ち、事務所を構えた当初の写真を見て代表の内川も懐かしんでいました。

ここでは、「渋谷アーカイブ写真展」を開催した経緯や、Commons Archive Collective(以後、CAC)の今後の活動についてたっぷりお話を伺いましたので、ご紹介します。

インタビューに応えてくださったのは、CACメンバ-の井出さん、清水さん、杉浦さんと、展示写真の撮影者である大西忠保氏のご子息、大西陽介さんです。

CACのメンバー:
・井出竜郎さん(アーキビスト)
・清水康仁さん(渋谷公園通商店街振興組合所属)
・杉浦草介さん(アートディレクター/グラフィックデザイナー)

「渋谷アーカイブ写真展」プロジェクトメンバー:
・大西陽介さん(渋谷道玄坂青年会所属)


「渋谷公園通り写真展」に続いて「渋谷アーカイブ写真展」を開催するに至った経緯を教えてください。
(杉浦)ー2021年に開催した第一回目の「渋谷公園通り写真展」に、今回写真を提供してくださった大西さんがいらっしゃったことがきっかけになりました。大西さんは、渋谷道玄坂商店街振興組合の青年会に所属しておられ、大西さんのお父様も長年渋谷に関わって来られた方です。大西さんのお父様は11年前に亡くなられていますが、趣味であった写真の中に渋谷の街の風景もたくさんあるということでした。

(大西)ー私の父は大学時代にカメラクラブに所属しており、当時盛んになっていた学生運動など社会問題を中心に撮影していたようです。実家にそういった写真が大量にあって、その中に渋谷の街の風景を撮影したものがあることは知っていました。「渋谷公園通り写真展」にお邪魔した際に、父の写真もこうして活かせないだろうかと思い、主催のCACの皆さんにお話したのです。

(杉浦)ー大西さんからお話をいただいたとはいえ、第2回を開催する具体案は立っておらず、あっという間に1年が経とうとしていました。このままでは時間ばかりが過ぎてしまうと思い、改めて大西さんに「お父様のお写真で展示を行いませんか」とご相談をしたのがきっかけです。写真展開催を具体化させる準備として、まずは大西さんがお持ちの写真を整理するところから始めました。

(大西)ー杉浦さんから連絡をもらって、2023年の2月ころから毎週のように集まって作業しましたね。まずは押入れに入っていたネガ4〜5千本ほどの中から、渋谷が映っていそうなものを300本位に分ける作業から始まりました。

より分けた300本から一つひとつ確認して、番号を付けてインデックス化し、どの場所を撮影したものか、年代はいつごろかを大まかに分類します。こうした作業はすべてアーキビストである井出さんのノウハウによって進みました。

大まかな分類ができたあとは、私が気になる写真を自宅でスキャンニングし、それは1,200枚くらいあったと思います。そこから最終的に、今回の展示作品となった200枚に絞りました。

2月から展示会の直前まで作業をしていたので、数百時間は費やしていると思います。

(杉浦)ー作業を行っていくなかで、渋谷芸術祭のコンテンツのひとつとして展示会の開催が決まりました。それも渋谷芸術祭の運営者の方々と我々を繋いでくださった、大西さんのお力のおかげです。

第一回目から変化した部分を教えてください。
(井出)ー違いでいうと、前回は渋谷公園通商店街振興組合という組織が保管していた記録ですが、今回は大西忠保さんという個人の方が記録したものということがあります。記録した人がはっきりしているというのはとても意味があることだと思っていて、今回はよりパーソナルな視点が入っているのが面白い。展示してみて、写真が持っている物語が一つひとつ違うなと。それは、写真を整理して情報を付けて、展示して初めて立ち上がってくるものだともいえます。例えば、大西さんの実家である「大西屋」を撮影した写真も、背景を知ることで理解が深まりますよね。そういった部分も今回の写真展の魅力になったと思います。

前回同様、年代ではなくエリア毎の展示にしているのですね。
(杉浦)ー私たちには地元の方々に楽しんでもらいたいという思いと同時に、若い世代の人たちにも楽しんで理解してもらいたいという思いがあります。場所毎に展示を行えば、当時を知らない若者も楽しめますし、見る人も理解しやすいと思います。

(井出)ー例えば「東京」といった広い範囲であれば、年代で分けるのも有効です。ただ、今回のように「渋谷」という狭いエリアの場合は、場所毎に整理した方が見る側は情報を整理しやすくなります。さらに理解を促進するために、写真一枚一枚に付されたQRコードを読み込むことでストリートビュー(Googleマップ)上で場所が表示できるように工夫しました。ストリートビューとの紐づけは前回から引き続き行っていることですが、特に当時の渋谷を知らない方には喜んでいただけていると思います。


今回のような写真展によって、得られるものは何だと思いますか?
(大西)ーそこは自分でも計り知れないものがあると思っています。写真は見る人によって思い起こす感情もさまざまで、当時をリアルタイムに知る人は懐かしく思うでしょうし、全く知らない人には新鮮に映るでしょう。見る人それぞれに違う感情を想起させるのが、この写真展の面白いところだと思います。現在、渋谷は100年に1度の再開発だと言われています。こうして過去を振り返るのも、きっと渋谷の今後を考えていく上での参考になるでしょう。

また、海外の方が興味をもってくれているのは意外なことでした。駅の周辺でも告知として写真を展示していたので、それを見て足を運んでくれたのかもしれません。

今後は父の写真が、いろいろな人の目に触れてもらえれば嬉しく思います。まだまだ写真はあるので、もし次に写真展を行うなら時代の幅やエリアを広げてもいいかなと思っています。

(清水)ー私にとっては、写真展を開催したことで大西さんと出会えたことが大きな出来事です。渋谷公園通商店街振興組合のメンバーとして地元で活動していますが、これまで渋谷道玄坂商店街振興組合との関わりはそれほどありませんでした。今回の写真展によって、商店街同士の行き来にも繋がっていければいいなと思います。

写真展を主催したCACとしては、今後どういった活動をしていきたいですか?
(清水)ー主催のCACの立場では、写真展を継続できる体制を作る必要があると思っています。今回は助成金を活用するなどして実現しましたが、、継続にはまだまだ乗り越えるべき壁があります。少しでも多くの方に、写真展を見に来てもらえるようにしていきたいですね。

(杉浦)ー写真展は私も継続して取り組みたいと思っています。一方で、CACとしてはそれ以外の活動もできればと考えています。例えば、アーカイビングという手法を使って街づくりという切り口でイベントを行うことなどです。人間が創作したもの全てにデザインが関わっているように、アーカイビングも何にでも関わり合えるものだと思っています。写真もそうですが、日常にある何でもないものも、アーカイビングというプロセスを通して体系化することで、それまでとは違う見方ができるのではないかと思うんです。CACでもそういった様々なアプローチや活動ができたら面白いだろうなと思っています。

(井出)ーアーカイブは場所や写真に限定されないので、対象を広げていろいろな活動ができたらいいなと思います。アーカイブズ学は、アカデミックな分野ですが、今回の大西さんのように、貴重なものをもっているけれど、活用方法がわからないという人とコラボするような、アカデミックではないやり方での可能性も広げていきたいです。そうすることで、アーカイブというのはこういうものだという体感を得られ、アーカイブズ学も市民権を得られるだろうと思います。

1週間開催された写真展は2500人あまりの来場者が訪れ盛況のうちに終了となりました。来場者の中には生まれも育ちも渋谷という90歳の男性の姿も。「小さいころは、ハチ公の像にまたがって遊んでいたんだよ」と、1960年代の渋谷の風景を眺めながら目を細めて話してくださったのが印象的でした。

既にある一見バラバラに見えるものも、アーカイビングという手法で、体系的に意味のある繋がったものになるというのを実感させられた写真展であったと思います。

CACが今後アーカイビングによってどういった価値の掘り起こしをしてくれるのか、その活躍が楽しみです。

撮影:Hiroshi Nakamura

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