経理・財務部門のテレワーク実現と電子インボイス
新型コロナウイルスの影響により、経理・財務部門の業務は、否応なしの改革の必要性に直面しています。しかしながら、2020年6月に日本CFO協会が実施した調査によると、テレワークは実施したが輪番制で出社する必要があったとの回答が74%に上りました。
社内的な要因による出社しなくてはならない理由として、
・内部決裁書類等への押印対応
・対面の必要がある社内会議の参加
・業務がテレワークに対応していない
・システム・セキュリティ環境の未整備
社外的な要因としては、
・紙の書類(請求書・契約書)の確認や押印対応
・銀行提出書類への押印や郵送
・監査法人や銀行など外部との打ち合わせ
・手形・小切手の受払い
・EB操作が社内に限定されている
などが挙げられています。
一方、コロナ禍におけるリスクは、
・売上の減少・業績の下方修正
・売掛金回収遅延・取引先の倒産
・決算業務の遅延
・資金繰りの悪化・資金効率の最適化
など様々で、経理・財務部門に携わる方々は日々対処を迫られています。
そのような状況でテレワークを推進するには、業務のクラウド化とペーパーレス化が不可欠です。特に、売上・仕入の請求書のデジタル化は、相手先がありますので、こちらの都合だけで進めることが難しく、経理担当者を悩ませる課題です。しかし見方を変えれば、取引先様でも同様に対応に苦慮している今が、電子化にスムーズに移行できるチャンスでもあると言えます。
2020年10月1日の電子帳簿保存法改正、2023年のインボイス制度導入等、請求書の電子化をとりまく環境が大きく変化しています。
政府も請求書の電子化を後押ししており、企業間で発生する請求書の完全なデジタル化に向けて、データ仕様を統一する取り組みが始まっており、政府とソフトウェア企業など約50社が近く協議を開始し、2023年までに導入を目指します。
また、業務ソフトウェアの開発・販売等を行う企業10社が発起人となって発足した「電子インボイス推進協議会」では、インボイス制度導入への対応だけでなく、ソフトウェア会社共通の「標準仕様」を策定し、見積りデータから、受発注データ、納品検収データ、請求書データ、入金・支払データまで、商取引の初めから終わりまでをデジタル化したソフトウェアを各社開発し、2022年秋に、異なるソフトウェアを使用していても、生成されるインボイスが同じフォーマットになる仕組みの利用開始を目標として取り組んでいます。
正しい経営判断のために鮮度の高い情報を提供する経理・財務部門の業務の遅滞、停止は避けなければなりません。BCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)の見直しも、経理・財務部門だけでなく、システム部門や営業部門を巻き込んだ全社的な課題として取り組んでいく必要があります。
出典:
(一社)日本CFO協会2020年7月1日News Release https://www.cfo.jp/
日本経済新聞 2020年7月30日朝刊
税務通信 3627号
管理本部 経理部
大畠 百合香