土地と建物を一括で売買した際の価格按分について
土地・建物の一括譲渡があった場合、法人税法、所得税法、消費税法の適用上、土地と建物で課税上の扱いが異なることがあることから、それぞれの譲渡価額を区分する必要が生じます。
売買契約は当事者の合意により成立することから、区分に当たっては当事者の意図するところを客観的に認定するのが原則でありますが、契約書等で土地及び建物の譲渡の対価が明示されていない場合、あるいは合理的な区分が行われていない場合は、何らかの合理的な区分を行う必要があります。
今回は、この土地と建物部分の合理的な基準による按分算定方法を巡り、課税庁と納税者が異なる主張を行い、納税者が更正処分等を受けた事例(令和4年9月9日判決・一部取消し)をご紹介します。
■事例の概要
不動産賃貸業を営んでいる請求人は、土地及び建物を一括で購入して貸付けの用に供し、減価償却資産の取得価額について「当該資産の購入の代価」を売買契約書に記載された土地及び建物の価額(本件内訳価額)に基づき算定した。
原処分庁は、本件内訳価額は著しく不合理であり、適正な時価を反映している固定資産税評価額の価額比に基づき建物の取得価額を算定すべきとして、所得税等の更正処分等の賦課決定処分をした。請求人は、第三者間での相対の商取引にて合意された本件内訳価額に基づき建物の取得価額を算定すべきとし、原処分の一部の取消しを求めた。
■審判所の判断
購入した減価償却資産の取得価額は、「当該資産の購入の代価」等の合計額とされており、このうち「当該資産の購入の代価」は、建物を売買契約で取得する場合、原則その売買契約の代金額が該当すると考えられる。
しかし、土地と建物が一括で売買された際、各価額がその客観的な価値と比べ著しく不合理であるのに、そのまま「当該資産の購入の代価」として認めれば、売買契約時に土地と建物の代金額の割り付けを操作することで減価償却資産として必要経費の算入額を過大に計上できてしまい、租税負担の公平の原則に反する。また、「当該資産の購入の代価」と規定するのは、通常であれば第三者間での減価償却資産の売買代金額が適正な価額といえるからであり、代金額が適正な価額と比較し著しく不合理な場合、当該代価は合理的な基準で算定すべきである。
本件内訳価額の合理性を検討すると、本物件の価格の総額は固定資産税評価額の総額を上回るが、建物価額はその固定資産税評価額を大きく上回る一方、土地価額はそれと同様か下回っている。これは、売買代金総額から建物価額が過剰に配分されたというべきで、本件内訳価額の土地価額及び建物価額は、いずれも適正な時価を反映した客観的な価値である固定資産税評価額と比較して著しく不合理といえる。よって、本物件に係る建物の購入代価は、土地と建物につき一定の基準時における適正な時価が反映された、合理的な基準といえる固定資産税評価額比により売買代金を按分して算定すべきと判断。
○売買契約書の金額(例)
土地 9,300、建物 21,700 合計 31,000(比率3対7)
○固定資産評価額(例)
土地 9,300 建物 6,200 合計 15,500(比率6対4)
■ポイント
土地と建物を一括で売買した際、当該売買契約による価額の按分が客観的な価値と比較し著しく不合理であれば、「当該資産の購入の代価」は合理的な基準といえる固定資産税評価額比によりそれぞれ按分して算定すべきと判じた。
■まとめ
一括購入・譲渡された土地・建物の譲渡価額の区分は、法人税法、所得税法、消費税法に共通する問題であるにもかかわらず、時価の算定という技術的に困難な問題に加え、法人税・所得税の関連する諸規定の相違などにより、その取扱いが複雑となっております。
何かお困りなことがございましたら、コンパッソ税理士法人までご連絡ください。
コンパッソ税理士法人 税理士 今山 優太