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親から子への資金移動 贈与となるのか<裁決例>

【親の銀行口座から子の銀行口座へ預金を移動】←贈与になるのか?
相続対策として、被相続人である父の預金口座から相続人である子の預金口座へ預金を移動するケースがよく見受けられます。では、似たようなケースで父の預金口座からお金が出金され、その子の預金口座へ入金された金銭の移動をもって父から子への贈与に当たるか否かについて争われた審判の裁決について紹介したいと思います。

1.前提
父の預金口座より現金を出金し、そのお金の一部を子の預金口座へ入金した。翌年も父の預金口座より現金を出金し、その子の預金口座へ入金した。子は、父は亡くなるまで父の営む医院の青色事業専従者であった。

2.争点
この資金移動は父から子への贈与になるか否か。
 
3.争点についての主張
⑴ 子の主張
子は、資金移動の実態は本来父が従事すべき医療業務に子が父の代理人として従事した際に立替えて支払った費用の精算と今後同様に父の代理人として従事することによって立て替えて支払うこととなる費用の前渡しである。この各資金移動は父が子に対し贈与する意志をもって行われたものではなく、また父から受贈する意思をもって行われたものでもない。よって、子は各資金移動により、父からの贈与により財産を取得したとはいえない。
⑵ 原処分庁
 各資金移動について、子と父との間で金銭消費貸借契約が締結された事実及び子の主張する立て替えた費用の精算や前渡しの事実は認められない。従って、子と父との間には民法第549条に規定する贈与契約の要件事実について黙示の合意があったと認めるのが相当であるから、子は各資金移動により、父からの贈与により財産を取得したといえる。

4.事実認定
 ⑴ 父は父からの口座の出金と子への口座への入金を同時に行っている。
⑴ 子は父からの贈与により取得した現金を子の口座に入金することなく費消した。
⑵ 子は、自己名義のクレジットカードを保有し、ホテル利用料金・飲食代金・ネット購入代金などの支払に使用しており、その決済金の支払口座を本件子の口座としている。

5.結論
子は、本件調査担当職員に対し、父の指示により月1回から2回程度の頻度で開催される医療専門団体の会議に出席しており、その時の交通費等を支弁する目的で本件各資金移動をしていたとみるのが自然である。よって、子にこの各資金移動によって実質的に贈与と同様の経済的利益が生じていたと認めることはできない。したがって、子は、本件各資金移動により、父からの贈与により財産を取得したと認めることはできない。よって、贈与税は課税されない。

6.参考
相続税法上、贈与の意義を明確に定める定義規定がないため、ここでいう贈与とは、
 民法上の借用概念と解されています。そして、民法549条は、贈与について、「当事者の
 一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによ  ってその効力を生ずる」旨を規定しています。一方、相続税法における贈与税の課税対象となる贈与については、第9条において、「対価を支払わないで利益を受けた場合」は、贈与により取得したものとみなす旨を規定しており、贈与税の課税対象は、受贈者が贈与者の贈与の意思を受諾していなかったとしても、対価を支払わないで利益を受けたという事実がある限り、贈与税の課税は相当と解されています。
 今回ご紹介した裁決は、事実認定にかかわる問題でした。入金されたお金は、父の指示により医師専門団体の会議に出席した際の交通費等の支弁にあてたものであるとの申立てが認められました。従って、子には本件各資金移動により実質的に贈与といえるほどの経済的利益が生じていないから、贈与税は課されないという裁決となりました。

<参考文献>国税不服審判所令和元年6月27日裁決

渋谷事務所
串田 美幸

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