【introduction】行動することで生まれるもの
【introduction】は、コンパッソが注目する企業や人をご紹介しています。
コンパッソ社員が取材した内容を主観も交えつつお伝えしています。
渋谷公園通商店街振興組合主催「渋谷公園通り写真展1977-1997」
記録・保存監修:井出竜郎さん(写真右)
アートディレクション:杉浦草介さん(写真左)
プロジェクトマネージメント:清水康仁さん(写真中央)
2021年10月22日~10月31日まで渋谷公園通りで、渋谷公園通商店街振興組合主催の「渋谷公園通り写真展1977-1997」が開催されました。
1977年~1997年までの渋谷公園通り周辺の写真を展示し、渋谷の歴史を紹介する写真展です。
この写真展のプロジェクトを行ったのが、井出さん、杉浦さん、清水さんの3名です。彼らのご関係は、美術大学時代の友人です。
井出さんはアーキビスト*、杉浦さんはデザイナー、清水さんは不動産業とそれぞれの道を進んでいらっしゃいます。
この記事では、3名の方がなぜこの写真展を企画して、どのように感じたのかをお伝えします。
【はじまり】
写真展のきっかけは、お父様を亡くした井出さんを想い、3人が集まった際の何気ない話題からでした。渋谷の神南で生まれ育った清水さんが、縁側であぐらをかく祖父の写真が出てきたという話をしたことです。
そのエピソードに杉浦さんが反応。渋谷公園通商店街の方々から、昔の写真を集めて展示したら面白いのではないかと発案しました。
その時、ちょうど商店街のイベント企画を考えていた清水さんはさっそく行動に移します。まずは商店街の方に古い写真がないか聞き込みを行いました。しかし、なかなか集まらず、半ば諦めかけていた時、振興組合の事務所で「活動記録用」にとっていたアルバム60冊以上が見つかります。すぐにアーキビストの井出さんに連絡し、活動がスタートします。
【展示にむけて】
少なく見積もっても2000枚以上もの写真がある中、アルバムタイトルや写りこむ街並み、看板などから年代を予測。撮影された場所を割り出し、展示用に100枚を選出しました。もちろん、彼らが生まれる前や幼少期の写真が大半のため、清水さんのお母様や、商店街の方にヒアリングを行いながら作業を進めたそうです。
写真についての新情報は、写真展を開いてからも観覧者からたくさん集まり、その都度メモを取り、重要なアーカイブ情報として保存しているそうです。
写真展開催まで2か月、3人の作業は連日深夜にまでおよび、時には朝までかかったこともあったそうです。
【なぜここまでしたのか】
今回の写真展の準備は無償で行われました。なぜ、彼らはこの無償の活動にここまでエネルギーを注いだのでしょうか。
メンバーの杉浦さんは、「この企画をビジネスとして依頼されていたら、予算次第では断っていたかもしれない。たまたま、3人の持ち味を活かしてできる企画だったし、使命感を感じてしまった。アルバムを見つけた時から自然に走り出していた。」とおっしゃいます。3人の興味と好奇心がこの企画を動かしたのだろうと感じました。
清水さんは「この3人でできたことが自分の中では大きかった。ずっとやりたい事を探していたけれど、何をするのかではなく、誰とするのかという事が自分には必要な事だったと分かった。」と教えてくださいました。
アーキビストの井出さんは「学術的な分野に偏りがちな業界にいて、今回の様にアーカイブという手法が、それを求める人へダイレクトに届けることができたのが大きな気づきだった。」と振返ります。
3人の方は、まるで学園祭をやり終えた学生の様なキラキラとした表情でした。
【取材を終えて】
ビジネスの世界では、損得を考えることが必要です。それは、ビジネスである限り当たり前の事です。ですが、この3名の方を取材して、時には損得よりも好奇心で動いてみることが必要だと実感しました。何よりもまずは動いてみることで、次の景色が見えてくることもあるのだと思います。
10月31日まで開催されたこの写真展は予想を超える反響となり、連日多くの人が訪れました。予算がなく、十分な広報活動ができないなか、SNSを通じて情報が広まり、取材にお邪魔した日もフランス人の家族が見学に訪れていました。外国人のコミュニティの中でも拡散されているのだそうです。
清水さんら3人はこの活動を、渋谷の他の商店街や違うエリアでも続けていきたいとしています。活動を通じて、商店街の方との新たな交流が生まれたり、世代を超えて楽しんでいただけることが、他の地域でも広がればいいと。
昭和や平成初期の文化が若者に興味を持たれているいま、この”エモい”活動が若者の街渋谷からどう変化していくのか、とても楽しみです。
▼写真展公式Instagram 展示された写真を1日1枚、100日間更新予定▼
https://www.instagram.com/skpe_1977_1997/
写真展に訪れた方から当時の情報を聞く清水さん
アーキビスト*:「組織において日々作成される膨大な記録の中から、世代を超えて永続的な価値を有する記録を評価選別し、将来にわたっての利用を保証する(国立公文書館HPより)」役割をする人
広報部
堀江恵美子