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コロナ禍における役員給与の減額改定について

昨今の新型コロナウィルス感染症の感染拡大で多くの企業が大幅な減収となり、急激に業績が悪化、資金繰りにも重大な影響が生じています。
そこで、経営改善策として、役員給与の減額改定を検討される企業も多いことと思います。

ところで、法人税の取扱いでは、年度の中途で役員給与を減額した場合、定期同額給与に該当せず、損金算入が認められないケースもありますが、コロナ禍における役員給与の減額改定についてはどうなのでしょうか。

年度の中途で役員給与を減額できるか

1.原則は事業年度の中途において任意に変更できませんが、例外もあります。

税務上、役員給与を損金算入することができるのは、定期同額給与、事前確定届出給与など一定の支給方法に該当する場合のみです。
役員給与は毎月同じ金額が支給され、改定できるのは事業年度開始から3か月以内に一度だけで、それ以外の時期に任意に変更することは原則として認められません。これは、経営者が利益操作のために役員給与を利用することを認めないということです。
 
しかし、どんな状況でも同額で支給しなければならないわけではありません。
例えば、当初想定できなかった経営環境の変化で経営状況が著しく悪化、それ以前の役員給与の額を減額せざるを得ないような場合には、業績悪化改定事由として、定期同額給与の範囲内の改定であると税務上も認めています。

参考:国税庁 タックスアンサー №5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)(閲覧日 2020.9.4)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm

2.新型コロナウィルスを理由とした減額改定は認められるのか?

国税庁の「国税における新型コロナウィルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」において、新型コロナウィルスの影響で役員給与の減額が認められる業績悪化改定事由の二つのケースを例示しています。

①業績が悪化した場合

各種イベントの開催を請け負う事業者が、新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止の観点から、イベント等の開催中止の要請があったことで、今後、数か月間先まで開催を予定していた全てのイベントがキャンセルとなった。その結果、予定していた収入が無くなり、毎月の家賃や従業員の給与等の支払いも困難な状況であることから、役員給与の減額を行う場合

②業績の悪化が見込まれる場合

観光業を行っている会社で、新型コロナウィルス感染症の影響により、外国からの入国制限や外出自粛要請が行われたことで観光客が減少して、当面の間は、これまでのような売上げが見込めないことから、営業時間の短縮や従業員の出勤調整といった事業活動を縮小する対策を講じた。いつになれば、観光客等が元通りに回復するのかの見通しも立っておらず、今後、売上げが更に減少する可能性もあるため、役員給与の減額を行う場合

上記①のように「業績等が急激に悪化して家賃や給与等の支払いが困難となり、取引銀行や株主との関係からもやむを得ず役員給与を減額しなければならない状況にある場合」や、上記②のように「現状では、売上など数値的指標が著しく悪化していないとしても、感染拡大が防止されない限り、現時点において、経営環境は著しく悪化しているものと考えられる。そのため役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避な場合」は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響が業績悪化改定事由に該当するとしています。
実際に減額改定する際には、個々の企業におけるコロナの影響の大きさや資金繰り等の状況が業績悪化改定事由になることを十分に検討することが重要ですが、その際、財務状況や取引銀行等との関係からやむを得ず役員給与を減額したという根拠資料を作成しておくことが望ましいでしょう。

参考:国税庁「国税における新型コロナウィルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ 5新型コロナウィルス感染症に関する税務上の取扱い関係 問6 問6-2」(閲覧日 2020.9.4)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/faq/05.htm#q5-6

3.業績回復に伴う増額改定はどうか

 業績悪化改定事由により減額改定した役員給与ですが、役員の生活のことを考えれば、業績回復後は、早急に減額前の水準に戻す増額改定を検討したいところです。ところで、コロナ禍の影響で、減額改定した役員給与を同じ事業年度に増額改定を行うことは税務上認められるのでしょうか?
この場合の増額改定は、もちろん業績悪化改定事由には当たりませんし、コロナ禍の影響から脱したということだけでは「役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」による臨時改定事由にも該当しないと考えます。
定期同額給与の要件を満たすために、増額改定は、翌年度の通常改定(事業年度開始から3ヶ月以内)の時期まで待つ必要があります。

(参考文献「税務QA 2020年8月号 コロナ関連特集Ⅲ コロナ禍における役員報酬の改定に関する取扱い」鬼頭朱実、西川真由美著 税務研究会)
(参考文献「週刊税務通信 №3602、№3603、№3606 税務研究会)

高田馬場事務所 
加藤紳一郎

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