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中小企業における法人税法上の棚卸資産の評価


棚卸資産とは、販売することを目的として資産及び製造するために必要な資産等をいいますが、法人税法上は有価証券及び短期売買商品を除く資産で棚卸しをすべきものとして下記のことをいいます。

① 商品又は製品(副産物及び作業屑を含む)
② 半製品
③ 仕掛品(半成工事を含む)
④ 主要原材料
⑤ 補助原材料
⑥ 消耗品(ダンボール等の梱包財、燃料、事務用品など)貯蔵中(未使用)のもの
⑦ その他これらに準ずる資産

法人の所得(儲け)は、益金(税務上の収益)から損金(税務上の原価・費用・損失)を差し引いて計算されます。その損金のうち大きな割合を占めるのが、売上原価でそれは、次の式で求められます。

売上原価=(期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高)
 
この算式のうち、期首棚卸高と当期仕入高は既に帳簿等で計算・計上されていますので、売上原価は期末棚卸高を算定することにより確定することになります。期末棚卸高がいくらあるかによって、売上原価が変動するため、益金の額に大きな影響を与えます。すなわち、期末棚卸高が期首棚卸高より多ければ売上原価が少なくなり、益金が増加します。逆の場合は、益金が少なくなります。したがって、売上原価を計算する上でこの期末棚卸高の評価が重要となります。そこで、法人税法では、棚卸資産の取得価額の算定方法、評価方法について、次のように規定しています。

1、 取得価額

(1) 商品や原材料等で購入した棚卸資産

次の費用の合計額
イ、 購入代価
ロ、 購入のために要した費用(引取運賃・荷役費・運送保険料・関税等)
ハ、 販売や消費するために直接要した費用

(2) 製品や仕掛品等で、自社で製造・採掘・栽培等した棚卸資産

次の費用の合計額
イ、 製造に要した原材料費、労務費、経費
ロ、 販売や消費するために直接要した費用

2、 評価方法

(1) 個別法(個々の取得価額をその期末評価額とする方法)
(2) 先入先出法(先に仕入れたものから先に払い出されたと仮定して評価する方法)
(3) 総平均法(期首棚卸資産の総額と期中取得棚卸資産の総額の合計額を、これらの棚卸資産の総数量で除した単価によって評価する方法)
(4) 移動平均法(棚卸資産を取得するたびに平均単価を計算し、期末に最も近い日の平均単価によって評価する方法)
(5) 最終仕入原価法(期末に最も近い時点で取得したときの単価によって評価する方法)
(6) 売価還元法(売価によって計算した棚卸資産に原価率を乗じて評価する方法)

3、評価方法の選定・届出、変更

上記のうち何れかを選定して、法定期限(設立事業年度又は新規事業開始事業年度の確定申告書の提出期限)までに届け出なければなりませんが、その届出をしていない場合や、届出た方法で評価しなかった場合は、最終仕入原価法による原価法(法定評価方法)により評価します。
なお、採用していた評価方法を変更するときは、変更したい事業年度の開始日の前日(前期末)までに変更申請書を提出しなければなりません。ただし、現行方法採用から相当期間(3年程度)経過していない場合、合理的理由がない場合、変更が所得の計算上妥当でない場合は申請が認められないことがあります。

4、棚卸資産の評価損の計上

 棚卸資産は原則評価替えによる評価損の計上は認められていませんが、次に掲げる事実が生じた場合で、その棚卸資産の価額(時価)が帳簿価額を下回った場合に、その時価を限度として損金経理(評価損として計上)したときは、損金の額に算入できます。
(1) 災害により著しく損傷した場合
(2) 季節商品で売れ残ったもので、今後通常の価格では販売できないことが、過去の実績から明らかな場合
(3) 用途が同じで、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたため、今後通常の方法では販売できなくなった場合
(4) 破損、型崩れ、棚ざらし、品質変化により、通常の方法では販売できなくなった場合
上記により評価損を計上するときは、これらの事実が生じていることと、著しく低い価額で販売していることを証明する資料を整備しておくことが必要です。
なお、時価が帳簿価額を下回った場合でも、それが単に物価変動、過剰在庫、建値変更等で下落した場合は評価損の計上は認められません。

出典 国税庁HP
りそな総合研究所「中小企業のための税務知識」より

東京練馬事務所
寺田 知己

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