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社会福祉法人が受ける寄附物品の会計処理について

 社会福祉法人では、日ごろから寄附金を受ける機会が数多くあります。
最近では、新型コロナウィルス感染症の影響により、寄附金だけでなく寄附物品を受ける機会も多くなっているのではないでしょうか。

 寄附物品を受け取ったときの会計処理について、社会福祉法人会計基準の運用上の留意事項では下記のように定めています。

寄附物品については、取得時の時価により、経常経費に対する寄附物品であれば経常経費寄附金収入及び経常経費寄附金収益として計上する。土地などの支払資金の増減に影響しない寄附物品については、事業活動計算書の固定資産受贈額として計上するものとし、資金収支計算書には計上しないものとする。
ただし、当該物品が飲食物等で即日消費されるもの又は社会通念上受取寄附金として扱うことが不適当なものはこの限りではない。
「社会福祉法人会計基準の運用上の留意事項」9(2)

寄附物品の受け入れ価額については、取得時の時価となります。

寄附物品が消耗品などの経常経費に該当する場合と固定資産に該当する場合では会計処理が変わります。

①消耗品などの経常経費の寄附を受けた場合

経常経費寄附金収入及び経常経費寄附金収益として計上する。

資金収支計算書の経常経費寄附金収入と事業活動計算書の経常経費寄附金収益の両方に計上が必要となりますが少し注意が必要です。
現在の会計ソフトのほとんどは事業活動計算書・貸借対照表科目の仕訳をすることで資金収支計算書に自動的に仕訳がされるようになっています。
資金収支計算書に仕訳を連動させるためには借方、貸方のどちらかに「支払資金」科目が入っていないと連動しません。支払資金とは大まかにいうと流動資産・流動負債項目となります。(引当金など一部のものは除きます)

単純に (消耗器具備品費) / (経常経費寄附金収益) と仕訳をした場合には、支払資金科目が入っていないため経常経費寄附金収入には表示されません。

この場合には、支払資金の性格を持つ「資金諸口」などを間に挟んで仕訳をすることになります。

 例)時価5万円の空気清浄機の寄附を受けた。

   (消耗器具備品費) / (資金諸口)    50,000
    (資金諸口) / (経常経費寄附金収益) 50,000
 
このように仕訳をすることにより事業活動計算書の「経常経費寄附金収益」及び資金収支計算書の「経常経費寄附金収入」に連動して計上されます。
また、TKCのFX4クラウドやCIJのSWINGなどは資金収支仕訳を直接修正できますが、連動する仕訳、しない仕訳をしっかり把握しておかないと見落とす可能性がありますので気を付けましょう。
 

②固定資産の寄附を受けた場合

固定資産受贈額として計上し資金収支計算書には計上しない。

 例)時価100万円の車両の寄附を受けた
 
    (車両運搬具) / (固定資産受贈額) 1,000,000
 
 資金収支計算書には計上しないので、資金諸口を通さず仕訳をします。

では、新型コロナウィルス感染症関係でマスクやガウン、手袋などを受け取った場合には会計処理は必要でしょうか。

上記留意事項のただし書きでは「飲食物等で即日消費されるもの又は社会通念上寄附金として取り扱うことが不適当なものはこの限りではない」となっており、マスク等もすぐに消費されるものなので、大量でなければ会計処理を行わなくても問題はないように思います。

ただ、社会福祉法人の計算書類は公表されているため、マスク等の寄附物品を経常経費寄附金収益と保健衛生費などに計上すれば、「感染症対策をしっかりとしている」見栄えのいい決算書となります。
このようなことも考慮して会計処理を検討してみてはいかがでしょうか。

参考
厚生労働省HP「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」の一部改正についてhttps://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000498839.pdf

コンパッソ税理士法人
横浜青葉事務所 日高 健

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