ナレッジ

KNOWLEDGE

  1. HOME
  2. Knowledge
  3. 相続・贈与
  4. 2023年税制改正後、暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを選ぶ??

2023年税制改正後、暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを選ぶ??

子供や孫に年間110万円までの贈与については、贈与税が非課税であることは、よく知られています。
また相続開始前3年以内に贈与した場合は相続財産に含めて相続税を計算し、支払った贈与税を差し引き相続税を納税する「生前贈与加算」についても、ある程度認知されています。

また2,500万円まで贈与税は非課税となる相続時精算課税制度というものがあります。
相続時精算課税制度では、2,500万円を超えた金額については一律20%の贈与税が課税され、相続開始時にそれまで贈与していた財産の贈与時点の価額で相続財産に含み相続税を計算を行います。

この相続時精算課税制度は、暦年贈与と比べると利用している方は格段に少数です。
理由としてはどうせ相続税を納めるなら、利用する価値は無いのではないかということだと思います。

また、一度相続時精算課税制度を選択した場合は、その後暦年贈与へ切り替えることができないことも利用しない要因だと思います。

ただ相続時精算課税制度を活用したほうがよいこともあります。
例えば、会社の経営者の場合です。自分の会社が利益をだし株価が毎年上昇する場合、頑張って利益を出せば出すほど会社の株価が上昇し、相続の時に多くの相続税を支払わなければならないことに、どうしてよいのかと頭を悩ます経営者も多くいらっしゃいます。

このような場合、相続時精算課税制度を活用すると、株の贈与を贈与時の価額で贈与できるため、相続までに業績が好調で株価が上昇していても、贈与した分については相続税を気にすることはないのです。

このように財産価値が上昇する場合は、相続時精算課税制度の活用は大きなメリットとなります。

2023年の税制改正により、相続時精算課税制度について、これまで2,500万円の非課税枠だけを贈与税の計算で考慮いていましたが、これとは別に毎年110万円の基礎控除枠が新たに設けられることとなりました。

また暦年贈与については持ち戻しの対象となる暦年贈与が相続開始前3年以内から7年以内に拡大されることになりました。

ただし、新たに対象となった4年間の贈与については、合計100万円の非課税枠が設けられることとなります。この改正は2024年1月1日以降に行われる暦年贈与から適用されるため、2027年1月1日以降に発生する相続から対象となります。

このように相続時精算課税制度や暦年贈与について税制改正が行われることとなりますので、生前贈与を行なおうか考えている場合はどちらの制度を利用するか十分ご検討ください。

将来のことは誰もわかりません。
相続対策として当時最良と考えたことも、時が経つとその対策が凶と出ることも間々あります。

例えば、相続開始前3年以内の持ち戻しがない、相続人でない子のお嫁さんに多額の暦年贈与をすることもあります。しかし、その後、お子さんがお嫁さんと別れることも考えられますし、先ほどの相続時精算課税制度を活用した会社の株価が下落して相続開始時点で財産価値がないのに、贈与時点の株価で相続税を納めなければいけないこともあります。

ですので、相続対策だけを検討するのではなく、どのような事態になるかできるだけたくさん想定したうえでどの対策を講じるかはしっかり検討し、ご自分で納得したうえで活用することをお勧め致します。

渋谷事務所
朝倉 基允

関連記事