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海外で勤務中にケガした場合の労災保険について

勤務中に社内もしくは外出先で転んでケガをした場合など、そのケガの治療費は労災保険でカバーされます。では、海外での勤務中に同様のケースがあった場合はどうなるのでしょうか。
一般的な海外出張中であれば、ケガなどした場合も、労災給付で認められた治療について労災保険の適用を受けることが出来ます。

しかし、同じ海外勤務中であっても、海外派遣の場合は、仕事中のケガであっても労災保険の給付対象とはなりません。
海外出張とは、国内の会社に所属したまま、その会社から指揮命令を受けて海外で勤務をすることをいいます。
これに対して海外派遣とは、出向・転勤などにより海外の会社に所属し、その会社から指揮命令を受けて勤務することをいいます。
出張か派遣かの判断は、海外での滞在期間の長短は関係なく、給与がどの会社から支払われているか、社内での所属の取り扱いがどのようになっているか、など勤務の実態を総合して判断されるため、判断が難しいケースもあります。

 そこで労災保険制度には、海外派遣者でも国内の労災保険の対象とするための特別加入制度があります。
労災保険は、本来国内にある事業場に適用され、そこで就労する労働者が給付の対象となる制度ですから、通常であれば海外の事業場で働く労働者は対象とはなりませんが、都道府県労働局長に海外派遣の特別加入の申請をし、その承認を受ければ労災保険の適用対象となることができます(任意で定めた賃金[給付基礎日額]に基づいて計算した保険料を別途納付する)。海外での業務災害、通勤災害についても国内の労働者と同様の取り扱いを受けることができます。

海外出張の場合も、海外派遣による特別加入の場合も、治療費を申請する場合は、一時的に海外の病院などに立て替え払いをし、後日その立て替え払いの証明書類を添付して、国内の労働基準監督署に申請書を提出し、労災給付で認められた治療について、立て替え分の返金を受けることになります。
 従業員が海外で勤務をする場合、民間の保険を利用することが多いですが、海外勤務中のケガや病気であっても、業務に起因するものであれば、国内と同様の労災保険の適用を受けることができます。ただ、出張なのか派遣なのか判断が難しいケースの場合は、海外派遣の特別加入申請をしておくことが望ましいといえます。

コンパッソ社会保険労務士法人 重森光代

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