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在宅勤務関係費用と特定支出控除

サラリーマンでも仕事上の必要経費を所得から控除できる特定支出控除という制度があることはご存じでしょうか。「サラリーマンも仕事に使うスーツ代を経費にできる」という話を一度は聞いたことがあるかもしれません。
 しかしこの制度は実際に活用している人がとても少なく、非常にハードルの高い制度であることでも知られています。
 
 国税庁では新型コロナウイルス感染症の流行に伴う在宅勤務の増加に対応する形で、ホームページに在宅勤務時の支出についてのQ&Aが掲載されました。

<特定支出控除とは>

まずは特定支出控除の概要を確認します。
特定支出控除で所得から控除できる金額は、下記のように計算されます。

「特定支出の金額-その年中の給与所得控除額×1/2」

要するに給与所得控除額の1/2を超えた支出があった場合に控除が認められます。

また特定支出として認められる支出は以下のものになります。

1 通勤費(一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出)
2 職務上の旅費(勤務する場所を離れて職務を遂行するための直接必要な旅行のために通常必要な支出)
3 転居費(転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出)
4 研修費(職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出)
5 資格取得費(職務に直接必要な資格を取得するための支出)
6 帰宅旅費(単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出)
7 勤務必要経費(その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの。65万円限度)
(1)図書費
(2)衣服費
(3)交際費等

控除を適用するには、上記の支出が仕事上必要であった旨を給与支払者に証明書を書いて貰うことや、一度の利用が15,000円以上になる鉄道・船舶・自動車については旅客運送事業者に証明書を書いて貰うことが必要になります。その上で確定申告を行う必要があり、手間も大きくなります。

<令和2年分以降在宅勤務で認められる費用>
そしてこの度、国税庁のQ&Aページに掲載された在宅勤務費用は次の4つになります。

⑴ 机・椅子・パソコン等の備品購入のための費用
⑵ 文房具等の消耗品の購入のための費用
⑶ 電気代等の水道光熱費やインターネット回線使用のための費用
⑷ インターネット上に掲載されている有料記事購入のための費用

このうち⑷のみが特定支出として認められるということで、ほとんどのテレワークの費用は特定支出にはならないようです。

例えば年収400万円の人の給与所得控除額は124万円になりますので、半分の62万円を超えた金額部分が所得から控除されます。
この金額以上支出している状況は非常に限定的になってしまうので、資格取得費用や単身赴任の帰宅旅費が多額になった場合に、+αで仕事用のスーツ代やネット記事代等も控除できるかもしれないと頭の片隅に入れておいたらいいかもしれません。

参考文献
国税庁 “No.1415 給与所得者の特定支出控除”
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1415.htm
国税庁 “令和2年分以後の所得税に適用される給与所得者の特定支出の控除の特例の概要等について(情報)”
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku//shotoku/shinkoku/200629_2/index.htm(参照2020-10-05)

コンパッソ税理士法人
横浜青葉事務所 鈴木 慎介

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