コロナ禍とM&A
日本全体において、今から5年後には、平均引退年齢である70歳を超える中小企業の経営者は約245万人とされ、その半数を超える約127万人が後継者未定と見込まれています。
コロナ禍による経営の不透明さも重なり、今後の出口戦略の見通しが立たずにお困りの経営者の皆様も多いのではないかと思います。
今回は、中小企業のM&Aについて、コロナ禍の環境も交えて、買い手と売り手の双方の立場に焦点を当ててみたいと思います。
1.コロナ禍と事業リスク
自社の強みを持つ分野に経営資源を集中した「選択と集中」型の経営は、コングロマリット型の多角化経営に比して、経営効率の観点からは優位性があると捉えられている傾向があります。
今回のコロナ禍においては、航空業界や旅行業界、飲食業界等、選択と集中により効率的な経営を行っている企業においても、不測の事態が生じ、大きな経営の悪化を齎す結果となりました。
一見非効率ともとれる関連性のない事業を複数行っていることにより、コロナ禍の緊急時において事業リスクが分散され経営悪化を免れている企業も多くあります。
平時における経営戦略が緊急時においても全て正しいわけではなく、また、その緊急事態の内容により取るべき施策も変わってくるため、ただでさえ難しい事業構造の組み立ては、コロナ禍により更に難解になっていることが伺えます。
2.事業多角化とM&A
今まで自社内で行っていなかった新規事業を始めるには、色々な方法が考えられます。社員を採用してじっくり育てながら事業を創っていく方法、 ヘッドハンティングにより人財を引き抜いてスピーデイーに事業を立ち上げ成長させる方法、 新規事業を行っている会社をM&Aによりグループ内に取り込む方法等、様々な方法があります。
投資をすることができる資金が一定程度あり、スピード感を持って新規事業を立ち上げていきたい、というニーズがあるような場合には、買い手側と成り得る企業から見れば、M&Aは良い選択肢の一つとなり得ると考えられます。
コロナ下で経営が悪化してしまった企業もあれば、安定した経営を続けている企業もあります。また、コロナとは違った緊急事態が生じた場合には、これがどのように動くかわからない側面があります。
ただ、一つ確かなのは、経済を支える企業全体を企業集団と捉えた時には、様々な考えを持つ経営者の方が多数存在し、色々な製品やサービス提供され、あらゆるビジョンや経営理念が飛び交っているということです。
経済全体が危機的状況に陥ってしまいそうな状況下でも、企業がタッグを組むことで、お互いに補完し合うことができる可能性を持っているのがM&Aです。
売り手側から見れば、後継者がいない中で、自ら育ててきた事業を廃業しなければならないような状況を回避したり、自社内の成長事業に経営資源を振り向けることのきっかけになったり、経営資源が豊富な企業グループの傘下に入ることによって事業安定化を達成することができます。
また、延いては雇用の継続が達成されることにもなります。
今回は、コロナ禍における緊急事態の経営環境と事業多角化の観点から、M&Aを見てきましたが、事業規模の拡大強化や、海外進出等を目的とする場合にもM&Aは有効な手段です。
コンパッソグループにおいては、㈱ビズマッチにおいてM&Aに関するご相談を受け付けております。
≪参考文献≫:
中小企業庁HP:中小M&Aガイドライン―第三者への円滑な事業引継ぎに向けて―
https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001-2.pdf
中小M&Aハンドブックを策定しました
https://www.meti.go.jp/press/2020/09/20200904001/20200904001.html