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意外なものにも商標権(立体商標編)

中小企業がしっかりと対策しておきたいのが、知的財産権です。今回は「立体商標編」として、東京UIT国際特許業務法人の井上正弁理士にご紹介頂きます。

——以前は商標登録される商標は平面的なものに限られていましたが、平成8年の法改正により立体的な商標も登録されるようになっています。今回は、皆様がおそらく目にしているであろう物の中からこのようなものも商標として登録されているのか、というものをいくつかご紹介したいと思います。いずれも商標登録されていますので使用の仕方によっては商標権侵害となりかねません(もちろん、著作物と判断されれば著作権侵害となる可能性もあります)。

1.ケンタッキー・フライド・チキンのおじさんのマネキン

(商標登録第4153602号 J-PatPatからの引用)
みなさんご存じのケンタッキー・フライド・チキンのカーネル・サンダースおじさんです。ケンタッキーのお店へ行くと、必ずたたずんでいますね。カーネル・サンダースおじさんのマネキンをケンタッキー・フライド・チキン以外のハンバーガー・ショップの店頭に置いてしまうと問題になります。
ちなみに不二家のペコちゃん、ポコちゃんのマネキンも立体商標として商標登録されています(第4157614号、第4157615号)。

2.あひるのおもちゃ
あひるのおもちゃ
(商標登録第4210761号 J-PlatPatからの引用)
あひるのおもちゃが立体商標として登録されています。商標権者は株式会社バスクリンです。商標は、その商標を認識することで「だれだれさんのもの」と分かるようにする性格を持っています。株式会社バスクリンは、あひるのおもちゃのCMをやっているので、このあひるのおもちゃを見ることで、「あ~バスクリンだ!」って思わせたいのでしょう。

3.サッポロ一番みそラーメン

(商標登録第4401695号 J-PlatPatからの引用)
「サッポロ一番みそラーメン」こんなものも立体商標として登録されています。もちろん、指定商品は「即席中華そばのめん」です。但し、このケースは立体的な形状に特徴があるのではなく、袋に表示されている文字(サッポロ一番は登録商標)や図柄と併せて認められているものと思われます。

4.チュッパチャプスの陳列

(商標登録第4414223号 J-PlatPatからの引用)
チュッパチャプスは、棒の先端に球体の飴がついているお菓子です。棒の部分を円柱の側面に指して陳列して販売している場合があります。その陳列している状態が立体商標として登録されています。上部についているChupaChupsという文字が含まれているマーク(登録商標)の影響が強いと思いますが、同じような陳列でお菓子を販売した場合には問題となるかもしれません。

5.ひよこ

(商標登録第4455887号 J-PlatPatからの引用)
ご存じ「ひよこ」です。この「ひよこ」も立体商標として登録されています。もちろん、商標権者は株式会社ひよ子です。立体商標であっても商標ですから、この「ひよこ」の商標をどういう商品、サービスに使うのか、というのが問題になります。

6.ゼブラのフェルトペン

(商標登録第4489930号 J-PlatPatからの引用)
ゼブラ株式会社のフェルトペンです。このケースは、立体商標をうまく使ってフェルトペンのデザインを半永久的な商標権で保護するものと思います。

7.コンクリートブロック

(商標登録第4639603号 J-PlatPatからの引用)
株式会社不動テトラのコンクリートブロック(波消しブロック)の立体商標です。同じような図で別の権利となっているものもあります(商標登録第4202498号)。別の権利では「テトラポッド」(登録商標)の文字が入っていますが、このケースでは「テトラポッド」(登録商標)の文字が入っていないで登録されているのが特徴です。

8.郵便ポスト

(商標登録第4765762号 J-PlatPatからの引用)
今ではほとんど見かけなくなりました昔の郵便ポストです。もちろん、商標権者は日本郵政株式会社です。こんなのも立体商標として登録されています。

9.乳酸菌飲料の容器

(商標登録第5384525号 J-PlatPatからの引用)
乳酸菌飲料の容器です。商標権者はもちろん株式会社ヤクルト本社です。容器に「ヤクルト」(登録商標)の文字が含まれていないのが特徴です。このケースは商標の識別力が無いとして特許庁では拒絶されていましたが、知的財産高等裁判所での裁判により特許庁に差し戻されて権利化されました。

10.ハンドバッグ

(商標登録第5438058号 J-PlatPatからの引用)
商標権者は、有名なエルメス・アンテルナショナルです。このようなハンドバッグも立体商標として登録されています。

11.消しゴム

(商標登録第5444010号 J-PlatPatからの引用)
商標権者は、コクヨ株式会社です。指定商品は「消しゴム」ですので、このような特殊な形状の消しゴムを作成すると商標権侵害となりかねません。文字や図柄が含まれていないものは立体商標として認めづらいという印象がありますが、「消しゴム」について、これくらい特徴的な形状であれば認められるという一例です。消しゴムを使い続けていると丸まってきて角が無くなってしまいますが、このような形状にすることで常に角があり消しやすいという機能を半永久的に保護できるようにしています。

12.バイク

(商標登録第5674666号 J-PlatPatからの引用)
本田技研工業株式会社のスーパーカブ(登録商標)です。このようなものも、立体商標として認められています。長年の使用が商標として区別できると判断されたのでしょう。実用性に優れたこのバイクのファンも多いようです。

 以上のように、皆様が目にしたことがある物の中にも立体商標として登録されているものが多くあります。
商標権は意匠権と違って半永久的な権利ですので立体的なデザインを立体商標として取得できれば強い権利となります。立体的な形状のみで商標権を取得するのは難しいですが、そのような権利を取得できれば有効な権利となります。
 (本コラムはあくまで一般的な情報提供を目的としており、専門的なアドバイスを目的とするものではありません。訂正、追加などが行われることもあります。)——

東京UIT国際特許業務法人の井上先生に立体商標についてご紹介頂きました。
商標権を取得するタイミングについて、井上先生によると新たな商品やサービスが開発され、その売り出し前が理想的だということです。
自社の商品やサービスをしっかり守るためにも、こうした防衛は必要ですね。

東京UIT国際特許業務法人

東京UIT国際特許業務法人(http://www.uit-patent.or.jp/
3名の異なる専門分野の弁理士によって設立された特許業務法人。
とりわけAIやITといった分野に強く、30年のキャリアの中で多数の案件に携わっている。
その他、意匠や商標にも対応しており、ビジネスにおける様々な知的財産権の問題や事前対策を相談できる事務所である。

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