離職者削減の切り札「リテンションマネジメント」はどんな内容?
労働力不足の今、社員の離職は避けたい
現在、日本では少子高齢化が問題となっており、企業においては限られた人員で運営しているケースが多く見られます。
そのような状況において社員が退職を申し出た場合、企業としては貴重な人材を失うことになり、企業経営が困難な状況に追い込まれる可能性も十分にあり得るのです。
離職者が生じる状況は人事労務担当者の悩みの種といえますが、それを防ぐためには「リテンションマネジメント」が有効となります。社員が働きやすいと感じる環境づくりに努めて、社員の離職を防ぎましょう。
リテンションマネジメントとは?
リテンションマネジメントの「リテンション」とは、「維持」や「保有」を意味する言葉で、「リテンションマネジメント」とは、人材流出を防ぐために行うあらゆる対策のことを指します。
リテンションマネジメントが注目される背景としては、以前と比べると転職する社員が多くなり、企業としては貴重な人材を失いやすい状況となっているためです。
日本最大級の転職サイトを運営するマイナビは2019年4月に「マイナビ転職動向調査」を発表しました。それによると2018年時点における転職者の割合を示す転職率は、20代~50代男女でみると5.3%であり、2016年時点の3.7%と比べると上昇傾向にあります。
さらに、転職に対して「前向きな行動である」と考えている人が約6割に達しており、「自分が求める条件に合わなければ転職することは問題ない」という考え方が一般化している様子が読み取れます。
参考:マイナビ 「マイナビ転職者動向」を発表
https://www.mynavi.jp/news/2019/04/post_20002.html
これを企業の立場から見た場合、入社時から育ててきた社員が何らかの理由で転職してしまう可能性があります。それを防ぐためにもリテンションマネジメントによって社員の離職を防ぐ必要があるのです。
働く環境の改善で離職率低下 サイボウズ(株)の事例
リテンションマネジメントのメリットは、貴重な人材が長期間にわたって企業に勤め続けることです。つまり、社員が貴重な戦力となることから、企業業績の向上が期待できます。
リテンションマネジメントで行うべき対策としては「労働環境の改善」と「福利厚生制度の充実」があります。
リテンションマネジメントの内容について具体的に見ていくために、離職率の大幅な引き下げに成功したサイボウズ株式会社の事例を紹介します。
ソフトウェア開発会社である同社は1997年に創業しましたが、創業後しばらくの間は毎年のように離職率が10%を超えており、2005年の時点で28%を記録しました。
同社は離職率の高い状態を改善するため、労働環境の改善や福利厚生制度の充実を軸として働きやすい環境づくりを目指します。
同社が実施している労働環境の改善として、2018年から実施している「働き方宣言制度」があります。この制度の特長は個人の事情に応じて働く時間と場所を選べることです。
例えば、月曜から木曜までは午前9時から午後6時まで会社での勤務、金曜は自宅で勤務として勤務時間は午前8時から午後5時まで、という働き方を選べます。
一般的には、自宅で勤務する理由としては育児や介護などがあげられますが、働きながら大学で夜間学ぶために、または副業に取り組むために決められた曜日だけ早めに業務を切り上げることも認められています。
家庭の事情だけに限らず、自分自身のスキルアップのために自由な働き方を選べることは魅力的といえるでしょう。
また、同社が実施している福利厚生制度としては2006年から実施している育児・介護休暇制度があります。
育児・介護休暇制度を導入している企業は多いですが、同社の制度の特長は利用できる期間が最長6年間であることです。さらに同制度に合わせて、妊娠が判明したときから取得できる「産前休暇」の制度も導入されました。
生まれたばかりの子供を育てるのはとても大変であるため、育児休暇の取得は必要となりますが、同社では社長が率先して育児休暇制度を利用しました。社員が安心して育児休暇を利用できる点は大きなメリットといえます。
参考:サイボウズ株式会社 ワークスタイル
https://cybozu.co.jp/company/work-style/
まとめ
年々少子化が進んでいる現在、将来の働き手はますます減ることが予想されます。企業間においては少ない人材をいかに確保するか、ということが求められるほかにも、採用した社員がいかに長い間働ける環境をつくるか、ということも求められます。
それを実現するのが「リテンションマネジメント」です。時代の流れの変化によって社員が働くためのモチベーションも変化していますが、今、社員は何を求めているのか、どのような環境であれば働きやすいのか、ということを常に考えて、実行に移していくことが重要となります。
(画像は写真ACより)