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減給処分とは?減給処分をする際の注意点はなに?

従業員が問題行動を起こしたときに、会社は懲戒処分を行うことができます。懲戒処分の7項目の中で「勧告」「譴責(けんせき)」に次ぐ処分が「減給=賃金カット」です。

しかし、社員が問題行動を起こしたからといって、会社が恣意的に減給を行うことはできません。今回は減給について、違法となるケースや注意点についてご紹介いたします。

違法な減給とは?

正当で合理的な理由のない減給は違法です。

雇用契約を交わす際に賃金の額は重要事項であり、労働者にとって生きるための糧です。そのため、会社側の一方的な都合により、減給をすることは違法にあたります。

減給の制裁について

減給の制裁については、労働基準法第91条において「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払い期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。」と法律で定められています。

つまり減給の制裁においては、先ず就業規則があることが前提とされています。就業規則に減給の制裁を行う根拠となる規定がないと減給処分を行うことができません。

労働基準法第91条で定められている通り、1回の違反行為につき減給できる上限は、1日分の給与の半分まで、かつ1か月の減額総額は月収の総額の10%を超えない額とされています。

ただし出勤停止、遅刻や無断欠勤は、実際に労働をしておらず賃金支払いの必要がないため、この分の賃金を支払わなくても減給には該当しません。

一定の制限で注意すべきこと

・減給の対象は従業員の問題行動
労働基準法第91条では、「従業員の問題行動」を懲戒による減給の対象としています。

そのため管理職の降格による減給は、従業員の問題行動を理由とした減給ではないため、91条の制限は適用されません。また、従業員との同意による減給も、問題行動に対するものではないため、やはり91条は適用されません。

・減給できる期間は1回のみ
1回の問題行動につき、減給できるのは1回だけです。そして1回の減給額は必ず上限を守らなければいけません。仮に従業員が巨額の損害をもたらし、処分が軽すぎると感じたとしても、1事案につき1回です。

しかし従業員が、ひと月のうちに複数回の問題行動を起こしたため、その回数分の減給処分を行うと減給額が一賃金支払い期の上限である10%を超えてしまう場合は、その超過分を翌月に持ちこすことができます。月給制であれば、給与の9割に相当する額までは保証されますが、超過制裁分が消滅するわけではありません。

・就業規則の減給理由に該当していること
減給の制裁を行う場合、就業規則に記載している減給理由に該当していなければなりません。

そのため就業規則には、減給に関する規定を「第〇条」などの項目を用いて具体的に記載されている必要があります。またこの減給に対する就業規則は従業員全員に周知されていなければなりません。

・懲戒処分の相当性を守る
従業員が起こした行動に対して、減給処分が重すぎるとされる場合があるため、注意が必要です。

過去の判例では、保育士が園外保育中に園児2名を離脱させてしまったことに対して、減給処分を行うことは内容が重すぎるとして無効になったケースがありました。(七葉会事件 横浜地裁、平成10・11・17判決、労判754号22頁)

懲戒処分には合理的な理由が必要とされており、処分が重すぎる場合は懲戒処分の相当性を欠くとして、訴えられるケースもあるので注意しましょう。

・就業規則の手続きを守る
問題行動を起こしたからといって、突然減給処分を行ってよいわけではありません。まずは問題行動を行った従業員に、就業規則上の減給事案に該当することを説明したうえで、事実確認と本人の弁明の機会を与えます。

そして他の従業員が同じ行動をとっていないか、過去によく似た例がある場合の処分との差異はないかといった公平な処分であることも明確にします。さらに懲戒委員会で会議にかけ処分を下します。

これらの手続きを踏まなかった場合は、減給処分が無効となります。

まとめ

従業員が起こした問題行動に対する減給処分は、会社の経営を安全に存続させるため、また他の従業員を守るためにも必要です。

しかし減給処分を行うには、合理的な理由や就業規則に減給となる事由が記載されていることが必須であり、また上限額などの規定を遵守する必要があります。

従業員とトラブルになったり、処分が無効とされたりしないように、法律の規定を正しく理解することが必要です。

(画像はPixabayより)

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