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人事労務管理が抑えておきたい、2020年の働き方改革のポイントとは

コロナ禍で関心が高まる働き方改革

2020年は、コロナウィルスの影響もあり、都市圏を中心に柔軟な働き方が進んだ1年となりました。とはいえ、地方や中小企業の中には、どんな働き方を取り入れるべきなのか、何を変えて良いのかわからず、改革が思うように進められていないケースも少なくありません。

2020年は、働き方改革に関連する法律が数多く施行された年でもあります。自社の人事労務管理が法律を遵守しているのかをチェックしながら、今やるべき働き方改革を見ていきましょう。

時間外労働の上限規制を中小企業にも適用

厚生労働省は、ワーク・ライフ・バランスを改善し、女性や高齢者の労働率参加を促すため、労働基準法を改正し、時間外労働に上限を設けました。

この改正により、休日労働を含まない時間外労働の上限は、原則として、月45時間、年360時間となりました。尚、原則である月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月までと規定されています(参考:労働基準法第36条)。

臨時的な特別の事情がなければ、原則とされる上限を超えることはできなくなり、違反した場合には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることがあります。ただし、臨時的な特別の事情があり、労使協定で合意が得られた場合であっても、超えてはいけない上限が定義されているので注意が必要です。

時間外労働の上限規制は大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用されています。(参考:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

同一労働同一賃金の導入で公正な待遇の確保を目指す

同一労働同一賃金は、同一企業・団体における正規雇用労働者と非正規雇用労働者間の不合理な待遇改善を目的としており、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 第8条・第9条(パートタイム労働法)をはじめ、労働契約法(有期雇用契約)、労働者派遣法で定められています。

これらの法律の改正により、同一企業・団体内における正規雇用労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、各種手当などの賃金、教育訓練、福利厚生など、あらゆる待遇において、不合理な待遇差を設けることが禁止されるようになりました。

尚、事業主は、パートタイム労働者や有期雇用労働者から待遇差の内容や理由の説明を求められた場合は、必ず応じなければいけません。厚生労働省は、47都道府県に働き方改革についての相談を受け付ける「働き方改革推進支援センター」を設置し、企業を無料でサポートしています。

パートタイム労働者や有期雇用労働者への同一労働同一賃金の適用は、大企業は2020年4月1日から、中小企業は2021年4月から、派遣労働者への適用は、会社の規模を問わず、2020年4月1日からとなっています(参考:厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン)。

賃金請求権の消滅時効期間の延長

労働基準法の改正により、賃金請求権の消滅時効期間等が2年から5年(当分の間は3年)に延長されました。2020年4月1日以降に支払われる賃金が対象で、全ての労働者に認められている権利です。

そのため、事業主は賃金台帳、労働者名簿、出勤簿などの記録の保存期間を5年(当分の間は3年)に延長しなければならなくなりました。労働者を雇用している企業は、関連する書類の保存期間を5年に延長する準備を整えつつ、自社の給与計算を見直し、法律を遵守しているかをチェックしておくことが推奨されます。

尚、時効期間延長の対象となるものには、金品の返還(労働基準法23条、賃金の請求に限る)、賃金の支払(労働基準法24条)、非常時払(労働基準法25条)などが挙げられます。詳細は厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署が発行している未払賃金の請求期間延長に関する資料を確認するようにしましょう。

まとめ

2020年は、時間外労働の上限規制(中小企業も対象に追加)、同一労働同一賃金(大企業、派遣労働者が対象)、賃金請求権の消滅時効期間の延長(全労働者が対象)など、人事労務に関する重要な法律が施行されました。

その他にも、パワーハラスメント防止のための措置を講じることの義務化(大企業を対象に2020年6月1日施行)や、受動喫煙防止対策の義務化(2020年4月1日施行)などもルール化されています。いずれも法律で規定されている、企業にとっての重要課題です。わからないことは働き方改革推進支援センターなどに確認し、自社の働き方改革を推進していくようにしましょう。

(画像はphoto ACより)

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