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遺産分割は遺言通りに行わなければならないか

1.『遺言』とは

個人が亡くなられた場合には、亡くなられた方の財産を取得した方は亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告及び納税を行わなければなりません。このとき亡くなられた方が生前自分の財産をどなたに残すかの意思を示していることがあります。これを『遺言』といいます。

2.遺産分割は遺言通りに行わなければならないか

亡くなられた方の意思を尊重し、遺言がある場合には必ずその通りに財産を相続しなければならない、相談にお越しになる方の中にはそのようにお考えの方が多くいらっしゃいますが、遺言と異なる相続を行うことは可能です。
例えば奥様とお子様が一人のご家庭でご主人が亡くなられた場合です。遺産を全てお子様に与える旨の遺言が残されていたとします。このとき遺言と異なり、遺産を奥様とお子様で1/2ずつご相続されたときは、税務的には遺言で遺産をもらうはずだったお子様がその権利を事実上放棄し、話し合いを基に遺産の分割が行われたというように考えます。権利を事実上放棄したお子様から奥様に対して贈与が行われたとして、奥様に贈与税が課税されることもありません。

3.なぜ可能なのか

遺言と異なる相続を行うことが可能なのは、実際に財産を相続する当事者は相続人であるという考え方と相続で最低限もらえることが保障されている『遺留分』*によります。
例えば先ほどの例でご主人の財産がご自宅の不動産のみであった場合、ご自宅の所有者がお子様となったときには、奥様は今お住いのご自宅をお子様がどうされるか、不安に思われることもあるでしょう。1/2ずつの相続により、持ち分を共有としておけば、もし万が一売却するとなった場合にもそのお金をもとに次の住居を探す等の対応を取ることができます。
※*遺留分とは、遺族の生活を守るための制約。遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分をいいます。遺留分があるのは、配偶者、子(代襲相続人も含む)、直系尊属(被相続人の父母、祖父母)です。
※説明の簡略化のため、配偶者居住権については本件では省略しております。

また仮にご主人に愛人がいたとして、愛人に全ての財産を与える遺言が残されていた場合。何も救済措置がなければ、奥様とお子様は今後の生活を送ることが困難になるケースもあるでしょう。そういったときに遺留分があることを主張することで、遺言と異なる相続となるよう話し合いの場を持つことも可能となります。

いずれの場合でも相続が『争続』となってしまうことは、亡くなられた方が意図するところではないでしょう。遺言をお考えの方は、プロにご相談していただいたうえで、ぜひ長期的な視点でどうすべきかをお考えいただきたいと思います。

出典:
国税庁HP
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4176.htm

渋谷事務所 
秋葉 靖文

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