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弁理士が解説!生成AIの開発、使用などの注意点

 AIの進化に伴いChatGPTのような生成AIが急速に普及してきました。生成AIを利用するユーザも増える中、予期しないで著作権を侵害してしまう恐れをもつ開発者、ユーザの方や、逆に生成AIによって著作権が侵害されてしまうという不安をもつクリエイターの方もおられると思います。そのような方々の不安を少しでも解消するべく令和6年3月には「AIと著作権に関する考え方について」、令和6年7月には「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」が公表されていますので、それらの内容を簡単にご紹介したいと思います。
 生成AIと著作権との関係では、一般的には、生成AIの開発・学習段階と生成AIによる生成・利用段階とに分けられます。


(A I と著作権 令和5年度 著作権セミナー 令和5年6月 文化庁著作権課 第27頁)

 生成AIの開発・学習段階においては、生成AIの学習のために著作物を原則として利用することが認められています(著作権法第30条の4)。これは、イノベーション創出のため著作権の権利を制限させているからです。生成AIの開発者は生成AIを開発するために他人の著作物を学習させることが原則として出来ます。逆に言えばクリエイターの方は、自らの著作物を生成AIに学習させることを拒否することは原則として出来ないこととなります。

 但し、著作権者の利益を不当に害することとなる学習はできませんので、『「AI学習用データセットとして有償で提供されているデータベース著作物」を学習のために無許諾で複製等する場合』(AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス、第8頁)には、生成AIの開発者は許諾を得る必要があります。また、学習データの収集を制限する技術的措置が取られている場合などもAI開発者は無断で著作物を学習できないと判断されることがあります。クリエイターの方は、自らの著作物を無断で学習させたくない場合には、有償販売、学習データの収集を制限する技術的措置を取ることが考えられます。
 生成AIの開発者の方は、開発した生成AIが、知らないうちに著作権を侵害してしまうことを防ぐために、学習した著作物と類似したものを生成してしまうことを防止する技術的措置を施すことが著作権侵害から回避する有効な手段の一つです。

 生成AIの生成・利用段階においては、生成されたものが他人の著作物に類似していた場合には生成AIのユーザ、生成AIの開発者が著作権侵害に問われる場合がありますので、そのようなものを利用しないようにすることが必要です。また、生成AIのユーザが「生成AIに対して生成の指示をする際には、既存の著作物を指示する場合が想定されます」が、『「入力した既存の著作物と類似する生成物を生成させる」といった目的で入力を行う場合は』、著作権侵害となり認められない場合がありますので注意が必要です。
 AI開発者、AI利用者、著作物の著作権者であるクリエイターの方のいずれも著作権を尊重しつつAIを活用したイノベーション、著作物の創出を図る必要があります。

本コラムは、一般的な情報提供を目的としてのみ提示されているものであり、法律上またはその他の専門的な助言をするものではありません。本コラムの記載内容にもとづく、いかなる損害についても一切の責任を負いません。

【コラムを執筆いただいた方】

弁理士法人東京UIT国際特許

弁理士法人東京UIT国際特許(http://www.uit-patent.or.jp/
3名の異なる専門分野の弁理士によって設立された特許業務法人。
とりわけAIやITといった分野に強く、30年のキャリアの中で多数の案件に携わっている。
その他、意匠や商標にも対応しており、ビジネスにおける様々な知的財産権の問題や事前対策を相談できる事務所。

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