任意組合の会計と税務
任意組合とは
信用組合、商店街振興組合、生活協同組合、労働組合など聞き覚えのある組合は沢山あります。これらの組合には、実は法律(例えば労働組合法などの特別法)が定められており、その法律に基づいて設立が認められたものとなっています。
これら以外にも組合とされるものがあります。組合とは書かれていませんがPTAがその代表例です。これも実は民法において、「組合契約は各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる」と定められたものになります。このように、数人が出資をして共通の目的を持つものの集まりを任意組合ないしは民法上の組合と呼びます。今回は、この任意組合について少し考えてみます。
任意組合の成立要件
① 複数(2名以上、法人も可)の当事者
② 各自の出資(金銭に限らず、労働によるものもok)
③ 共通の目的の存在
④ 当事者同士の合意
以上のすべてを満たしたものが任意組合とされます。
任意組合の業務執行
当事者全員による参画が必要とされますが、他の当事者に委任することが可能とされています。当事者の過半数の賛成をもって可決されます。
任意組合の法人格
任意組合に法人格はありません。
任意組合の責任
当事者による無限責任とされます。
任意組合の会計
会計の結果たるもの当事者の損益計算を明らかにするために行うものであり、第三者に開示するものではありません。そのため、公的な会計ルールは存在しません。
ただ、当事者には、個人・法人が想定され、特に法人については会計の開示が要求されており、金融商品会計に関する実務指針というものにその取扱いについての記載があり、当事者は獲得した損益の持分相当額を当期の損益として計上するとされています。なお、各当事者への分配割合は、必ずしも持分割合に依る必要はないとされます。
その計算にあたっては、①組合全体の純利益を当事者の会計に反映させる方法、②組合全体の損益だけを当事者の会計に反映させる方法、③組合全体の損益だけではなく財産債務も当事者の会計に反映させるといった三通りの方法があります。これらは、個人・法人いずれにおいても共通であり、その旨が税務通達に記載されています。組合活動から生じた損失については、一定の制約が設けられているので注意が必要です。
任意組合の納税義務
任意組合は法人や人格のない社団には該当しません。そのため、任意組合に納税義務はありません。組合活動の成果である損益は、各当事者に課税されることになります。
任意組合の源泉徴収
任意組合は当事者の集合体であり、別の当事者を構成しません。したがって任意組合は源泉徴収義務者にはなり得ません。
任意組合の消費税
任意組合は法人格を持ちません。したがって消費税の納税義務者になり得ません。納税義務は各当事者に課されることとなります。消費税は各当事者の持分割合等に応じて計算します。計算の時期については、取引を行った時が原則とされますが、組合の計算期間(1年以内)の終了日にその計算期間の取引をまとめて各当事者が行ったものとして取扱うことも認めるとされます。
以上、法人格が認められていない任意組合などについては、一般的な事業会社の会計税務とは異なり特殊ですが、組合活動の成果は各当事者(構成員とも言います)に帰属し、税務も構成員課税とされます。ケースに応じてご利用されてはいかがでしょうか。
参考条文等
・民法第667条~第688条
・会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」平成27年4月14日改正第132項、第308項
・仙台高等裁判所 平成11年(行コ)7号判決 理由三
・租税特別措置法第67条の12、第41条の4の2
・所得税法基本通達36・37共-19、19の2、20
・法人税法基本通達14-1-1、14-1-1の2、14-1-2
・消費税法基本通達1-3-1、9-1-28
高田馬場事務所
小林 雅