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働き方改革時代の総務部門の在り方

企業に迫られるワークスタイルの変革

働き方改革に伴い、長時間労働の削減やテレワーク・在宅勤務へ対応する必要性が高まっています。日本の人口が高年齢化したこともあり、働き盛りともいえる世代の介護離職なども注目すべき点です。さらに人口減少という問題もあります。かのドラッカーも著書『ネクスト・ソサエティ』において「先進国における最大の問題は高年齢化ではない。少子化のほうである」と述べているほど、生産年齢人口である労働力の減少は重要視されています。
労働力の減少は企業において人材採用に支障をきたすことに繋がります。また以前のように新卒者の就職がそのまま終身雇用になるのではなく、優秀な人材であればある程、転職や離職も視野に入れて自身の経験の一つとして就職を考えているのです。それらに対する企業の対応策などとして、マスコミなどが先端企業の事例を取り上げているのと同じ施策をやみくもに導入しようとしてはいないでしょうか。導入している企業があるから自社でも必要だろうと考えるのではなく、自社のワークスタイルに合った制度の導入や改革をしなければ、環境適応にデメリットをもたらすことにもなり兼ねません。

総務の在り方

そうしたワークスタイルの変革を進める場合に、具体的に担当する部署は、通常、総務部や管理部になります。
総務という部署は、企業としての期待感が決して高いとは言えません。管轄事業は文書の管理に始まり、備品管理や受付業務、安全衛生の管理やイベント進行の責任、社内・社外の広報、リスクマネジメントなど広範囲に及び、常にあれこれと動き回っている印象があるのではないでしょうか。ですがそこにこそ、変革していく余地が多大にあるのではないかと思います。
 通常総務と言えば内的業務の「言われてやる総務」であり、その対義語として「戦略総務」があると豊田健一氏は著書『経営を強くする戦略総務』で述べています。経営の参謀役としても求められる総務の外部環境への適応こそが、総務のやるべきこと、経営を強くするための戦略総務の大きなテーマであると言えるのではないでしょうか。
 高度成長期時代、この時代はある意味「二十四時間戦えますか」というCMに代表される企業戦士の時代でした。時間に関係なく作業をし、残業することが美徳とされました。同一商品の大量生産がスタンダードであり、生活も画一的なものだったとも言えます。

ですが今は個の時代、個の把握と個への配慮が必要とされています。文化も違えば国籍や言語も異なる人々が同一組織にいることが当たり前となっています。結婚から育児や介護としてもそれぞれが異なる価値観で時間を必要としているのです。それらを社員の数だけ把握する状況を必要とされ、社員の個々の自立的選択を可能にするためのトライ&エラーの後に適したものを探っていくのが、戦略総務の姿勢でもあります。失敗を嫌う総務業務の中で、それでも一歩を踏み出し、改善の余地があれば素早い動きで変更していくという修正能力が今の総務に求められているのです。
 総務管理コストを把握していくと、その金額は人件費に次ぐ社内でも最大コストであると気づくでしょう。多大であるコストをすぐさま削減するというわけにはいきません。あくまで業務を見直し、その結果としてコスト削減を成し遂げる必要があります。まずは部署負担を含め、全容を把握することが大切になります。通信費や消耗品費などその数値を集計し見える化し、優先順位をつけて経費削減の狙いを定めます。例えば事務所の移転などは、その移転費用というイニシャルコストはかかりますが、オフィス面積を縮小し賃料を安いビルに移転するなど、移転後の負担が減少します。節電効果の高い空調や照明器具に入れ替えるのも、その際の費用はかかりますが、長期で考えれば経費としてはメリットになります。また商材の購入もサプライヤーに支払う価格構造を正確に理解し、状況によってはサプライヤー自体を見直し、サービスなどを変更することによって適正な商材に変更することも視野に入れる必要があるでしょう。

 戦略総務としての攻めの総務にも、守りの総務にも、必要なのはイメージする力です。自社の理解と総務と全社とのつながりの理解が必要となります。言われてやる総務は依頼者もいるため最後までやりきらなければ仕事になりませんが、戦略総務としての新しい取り組みなどは依頼者などがいないこともあり、途中で頓挫しフェードアウトすることも多くなります。そういった場合は総務としての企画をその都度全社にアピールし、社内の期待と関心を集めて、それを総務自体のモチベーションの高さへと昇華して自らにプレッシャーをかけることも必要になります。

参考文献 豊田健一著『経営を強くする戦略総務』

東京練馬事務所 総務部 菅原 明子

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