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今さら聞けない 5G

皆さんは「5G」をご存知でしょうか?最近、テレビCMで聞いたことがあるという方も多いと思います。「なんとなく早くなるんでしょ?」と思っているだけの方は、是非、5Gがもたらす未来を知って頂きたいと思います。

目次

そもそも5Gとは?

 5Gとは第5世代モバイル通信規格のことで、「5Generation」の略称です。モバイルデバイスに通信環境を提供する「モバイル通信システム」の第5世代方式であることを意味しています。現在の通信サービスの名称に用いられている「4G」も同様で、「4Generation」であることに由来します。海外の一部の国では2019年からサービスが始まっており、日本でも2020年3月にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが、6月に楽天がサービスを開始しました。

5Gが注目されるわけ

それでは、なぜ5Gが注目されているのでしょうか?それは5Gが携帯電話やスマートフォンだけでなく、あらゆる機器をインターネットに接続する、IoT(Internet of Things)向けのネットワークとして利活用されることが期待されているからです。
 5Gの特徴として、4Gより通信速度が100倍速い「高速大容量通信」に加えて、ネットワークの遅れが小さい「低遅延」、そして多数の機器を同時に接続できる「多数同時接続」といった、従来にはない特徴を現実にしています。
 IoTの利活用が広まると、将来的には家電や自動車、さらには街全体や社会を支えるありとあらゆる機器やインフラがインターネットとつながります。いわば「私たちの身の回りの様々なモノがネットワークに接続された世界」が待っているのです。
 4Gでは、スマートフォンなどのモバイルデバイス(人が持ち運んで利用する端末)を対象とした、「人向けの通信技術」でした。一方、5Gは、モバイルデバイスに限らず、私たちの身の回りに既に存在する、もしくはこれから存在する様々なモノを対象とする、「人・モノ向けの通信技術」です。様々なモノがネットワークに繋がり、連携したり最新データを受け取ったりすることで、私たちの生活はもっと楽しく便利なものになっていくことでしょう。これらは、5Gが通信業界だけの技術ではないことを意味します。様々な業界や企業が、5Gを活用することで新たなサービスを生み出し、仕事のあり方も変わってきます。通信業界だけでなく、医療や農業、交通など様々な業界が5Gに注目している理由はそこにあります。

5Gの変化がもたらすもの

4Gから5Gへと世代が変わると、通信速度が向上し、より多くのデータを短時間でやりとりできるようになります。動画配信サイトを例に考えてみると、4Gを利用して映画ダウンロードする場合、かなりの時間が必要です。それが5Gでは、2時間の映画をダウンロードする時間はわずか3秒ほどです。つまり、映像作品に関して言えば、好きな時に作品をダウンロードして視聴できるようになります。5Gサービスが始まることによって、私たちが現在スマートフォンで利用している様々なコンテンツが、もっと快適に利用できるようになります。動画は高解像度で楽しめるようになり、動きの早いスポーツ中継では、より滑らかな映像を視聴できるようになります。ゲームでは、高精細なグラフィックによるオンライン対戦型ゲームもスムーズにプレイできるようになります。また、SNSでは写真だけでなく動画の投稿ももっと手軽になり、YouTubeのように自分で動画を配信するユーザーは今よりもさらに増えていくことでしょう。

5G時代のビジネス

5Gは「高速大容量」「低遅延」「多接続」といった特徴を利用することで、工場や医療現場、遠隔運転など様々な分野で革新をもたらすと考えられています。5Gを活用した「自動運転」や「遠隔運転」などは、まさに5Gが起こす「移動革命」です。自動運転車両では、車両に搭載されている多様なセンサー、画像データ、さらにはリアルタイムで詳細な交通情報を反映させる3Dマップデータなど、クラウドと頻繁に通信する必要があります。また、遠隔運転でも同様に、遠隔の操縦席と車両間を低遅延で常時接続させる必要があります。これらの車両が移動しながら大容量のデータを常に送受信するためには、5Gが必要となります。国内の物流は、インターネットショッピングなどの普及により、深刻な人手不足に陥っています。物流業界が抱える課題を解決する技術として、自動運転による「トラック隊列走行」が大きく注目されています。また、人手不足・高齢化が進む農業に関しても、AIやロボット、無人トラクターを活用した新たな農業「スマート農業」が、製造業ではユーザのニーズにタイムリーに対応できるように、5G経由でクラウドと連動させることで工場内の無人搬送車の遠隔制御、センサーによる製造機器のデータ分析、監視カメラと画像認識を活用した作業員の行動分析を行う「スマート・ファクトリー」が、医療では救命率の向上が期待される「5G搭載次世代救急車」や、遠隔で専門医が診察する「5G遠隔診断」などがあります。他にも、VR(仮想現実)、ドローン宅配、AI家電、遠隔診療、旅館クラウド、自動走行バスなど、5Gがもたらす未来社会の姿は驚くものばかりです。

モノ消費からコト消費へ

5Gによって高速・低遅延などの高度な通信を行えるデバイスは、大容量の映像データを扱うスマートフォンやネットワークカメラだけではありません。例えば、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品にも通信機器が付与され、ネットワークを介して5G通信を行う可能性があります。私たちの身の回りにある様々な製品がIoT化され、5Gによってその流れは加速していきます。そして、今後さらに多様な顧客価値が創出されていくことでしょう。
近年、私たちは製品の所有や機能よりも製品の使用によって得られる一連の体験に対して、価値を感じ対価を支払う傾向にあると言われます。そして、この傾向は製品のIoT化の拡大によって、一層強まっていくことが予想されます。これまで売り切りで販売されてきた多くの製品は、製品の所有や機能に価値がありました。自動車、時計などはその例でしょう。一方、製品がコネクテッドになりIoT化すると、その製品を通じて収集するデータを活用し、顧客に新たな体験を継続的に提供できるようになります。つまり製品のIoT化によって、企業は製品の「モノ」としての価値だけではなく「コト」としての価値も顧客に提供できるようになります。
製品のIoT化によって企業は顧客に新たな価値を提供できる可能性がある一方で、新たな課題も発生します。なかでも大きな課題は、企業に求められる能力の変化でしょう。
製品切り売りのビジネスでは製品のデザイン力、機能設計・開発力、コスト管理能力などが重視されてきました。一方、IoT化による継続的体験を提供するビジネスでは、スマートフォンアプリの開発・修正・機能追加や、クラウド上のシステム構築・保守運用など、いわばIT領域の能力も重要となります。5GがIoTデバイスを提供する企業にとって魅力的な通信を提供できれば製品のIoT化が加速すると思われます。競合企業に対抗するために製品のIoT化へと舵を切ることが求められる場合もあるでしょう。企業は自らの能力を今後どのように変化させていくか問われることになりそうです。

5Gエリア展開

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどは、既に4Gサービスエリアを全国規模で展開していますが、5Gでは改めてエリア展開する必要があります。なぜならば、5Gの場合、当初は4Gと異なる周波数帯の電波を用いるため、5G対応のアンテナ設備やネットワーク設備の設置工事を改めて実施する必要があるからです。通信キャリア各社は、2019年1~2月に5G用周波数の割当を総務省に認定申請した際、認定から5年後までの5G基盤展開率について計画値を提出しています。2023年には、NTTドコモ、KDDIは90%以上、ソフトバンクは56%、楽天モバイルは56%の計画値となっており、通信キャリアによって5年後想定される5Gサービスエリアに違いがあります。なお、総務省は認定申請の募集に際し「周波数の割当後、2年以内に全国都道府県でサービスを開始すること」を条件に含めていることから、少なくとも2年以内に全ての都道府県において全4キャリアの5Gサービス開始されることとなります。

ローカル5G

通信キャリアによる5Gの全国サービスとは別に、企業や自治体などが独自に5Gを用いた無線通信システムを構築・利用することのできる制度「ローカル5G」が2019年12月に制度化されました。この制度を利用すれば、通信キャリアによる5Gエリア拡大や5Gサービススペック強化を待たずに、企業や自治体などは自らの個別ニーズを満たす5Gシステムを先行して構築・利用することができます。
5Gは、多様な技術と組み合わさることによって、工場の自動化や生産ラインの柔軟性を向上した「スマート・ファクトリー」、高精細な医療映像による「遠隔医療」、高度化された農機具を用いる「スマート農業」など、多岐にわたる領域に貢献すると期待されています。ローカル5Gでは、この基盤となる5Gシステムを通信キャリアの5Gサービスとは別に、利用者が自ら構築します。ユーザ企業や自治体などのローカル5G導入に向けて、多くのベンダー企業がローカル5Gソリューションの提供意向を発表しています。これまで自社内の閉じた無線ネットワークでは、Wi-Fiが一般的であり、ユーザ企業自らモバイル通信システムを構築することはほとんどありませんでしたが、これら企業のローカル5Gソリューションを活用することで、ユーザ企業や自治体なども5Gシステムを比較的容易に導入できるようになることが期待されています。

5G投資促進税制

5G設備は、地域経済やコミュニティの維持・活性化といった地域課題の解決にも大いに役立つとして、政府は令和2年度の税制改正大網(2019年12月閣議決定)に5Gシステムの導入を推進する税制支援策を盛り込みました。政府が認定する事業者は、条件を満たす5G設備への投資額について税制優遇(15%の税制控除と30%の特別償却との選択適用)を受けることができます。5Gについて「経済社会や国民生活の根本をなす情報通信インフラ」と位置付け、5Gシステムの構築を国家戦略として進めると明記しました。税優遇の対象となるのは、今後新生する特定高度情報等システム普及促進法の認定事業者で、安全性の高い事業者が政府の審査により認定されます。国内通信事業者だけでなく、ローカル5Gを整備する事業者も含まれます。これによって、ローカル5Gソリューションの提供・導入の促進が期待されています。

テクノロジーで変わるこれからの世界

おそらく、ここ数年で特に影響の大きいのは翻訳AIの進化です。高精度な同時通訳が登場し、世界を隔てる言葉の障壁は大きく引き下げられると予想されます。言葉の壁を越えて、世界中の民族の文化や民意が、より複雑に混交する社会が訪れるかもしれません。また、自動運転の普及による物流業界は大きな変革が起こることでしょう。AI、IoT、5G、ブロックチェーン、自動運転、こういった社会・技術状況の変化の中、付加価値や労働の対価などの考え方は大きく変化し、新しいビジネスや働き方をする人々は増えていくと思います。今後はこれらの変化の中で、高い視点と広い視野で現状と未来の距離を考えることがより大切になってくることでしょう。

※参考書籍
『5Gビジネス最前線』技術評論社
『5Gビジネス』亀井卓也 著
『5Gがまるごとわかる本』水上貴博・中村邦明 著
『2030年の世界地図帳』落合陽一 著

東京練馬事務所 野村 佑一

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