供託金と収入計上時期
昨年9月、ノーベル医学生理学賞を受けた本庶佑(ほんじょたすく)・京都大特別教授が、がん免疫薬「オプジーボ」を製造・販売する小野薬品工業から支払われた特許の使用対価について、大阪国税局から4年間で約22億円の申告漏れを指摘され、悪質な仮装隠ぺいではないとして重加算税は課されませんでしたが、過少申告加算税などを含めて追徴税額約7億円の所得税の修正申告をしたというニュースが流れました。
本庶氏と小野薬品工業は、本庶氏の特許についてライセンス契約を締結し、特許使用の対価として販売額の一部を本庶氏に支払うことが取り決められましたが、本庶氏は対価が不当に低すぎるとして、受け取りを拒否したため小野薬品工業は法務局に供託していました。
国税当局はその供託金について、供託金であっても有効な契約に基づいており、課税対象になる本庶氏の所得にあたると判断したとみられています。
供託とは、金銭や有価証券などの供託物を法務局などの供託所に預け管理を委ねて、最終的に供託所がその預けたものを受け取るべき相手に取得させることをいいます。
支払うべき相手がわからない場合や、支払うべき相手が受領を拒んだ際などに用いられるもので、相手に支払う代わりに供託をすることで、支払側は債務不履行に伴う法的責任を免れることになります。
実際に私共の実務においても不動産の賃料に関して供託されることはよくあります。
では、不動産賃料はいつ収入計上すべきものなのでしょうか。
所得税法基本通達では、不動産を賃貸したことにより収受する家賃、地代、更新料などの計上時期は次のように定められています。
(1) 契約や慣習などにより支払日が定められている場合は、その定められた支払日
(2) 支払日が定められていない場合は、実際に支払を受けた日
ただし、請求があったときに支払うべきものと定められているものは、その請求の日
(3) 賃貸借契約の存否の係争等(未払賃貸料の請求に関する係争を除きます。)に係る判決、和解等により不動産の所有者等が受け取ることになった係争期間中の賃貸料相当額については、その判決、和解等のあった日
(注) 賃貸料の額に関する係争がある場合に、賃貸料の弁済のために供託された金額については、(1)又は(2)に掲げる日
これは、賃貸借契約の解除をめぐり係争となった場合など賃貸借契約が存在するかどうかの係争ではない場合で、不動産の賃貸借の賃料額に関して貸主と借主間で合意が出来ず、貸主が不合意な賃貸料の受領を拒否し、借主が賃借料の弁済のために供託をした場合は、供託金を貸主が受取るか否かにかかわらず、貸主が賃貸料収入として計上すべき時期は、契約により定められている支払日となるということですので、供託された賃貸料であってもその家賃の支払日の属する年の収入金額として申告と納税を行う必要があります。
しかしながら、法人の場合は個人とは違い、貸付期間に対応した収益計上となりますので、詳しくはコンパッソ税理士法人までお問い合わせください。
いずれにしましても、正しく収入計上をして国税当局と無用な争いが起こらないようにしたいものです。
横浜青葉事務所 高橋紫
参照:日本経済新聞
所得税基本通達36-5(不動産所得の総収入金額の収入すべき時期)
国税庁 タックスアンサー 不動産所得の収入計上時期