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贈与を活用した不動産の取得について

夫から妻へ資産を贈与したり、親から子へ資産を贈与したりする方法と聞いて一番シンプルなのは現金の暦年贈与があります。現金を贈与すれば、贈与を受けた妻や子は、その現金を自由に使うことができます。現金の贈与は年間110万円までが非課税とされ、110万円を超えた場合は超えた金額に対し贈与税がかかります。しかし、相続開始前3年以内に贈与された資産は、相続税の計算の際に相続財産に加算され、支払った贈与税を控除して相続税を支払うことになります。つまり、親が亡くなる3年前以内に贈与をしても相続税の軽減効果はないことになります。さらに、2024年1月1日以降からの贈与では3年から7年に変更されます。

この暦年贈与以外にも夫から妻への贈与、親から子への贈与の方法はいくつかあり、今回は不動産をお持ちで将来の相続税を心配されている方が検討すべき有効な相続税の軽減方法を解説します。

1.住宅取得等資金の贈与をする方法

父母や祖父母などの直系尊属からの贈与のうち、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、増改築に使う現金を贈与された場合のうち、一定の要件を満たすときは、省エネ等住宅の場合には、1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までが非課税となります。またこの制度が利用できる受贈者の年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられました。この非課税の限度額は、暦年贈与110万円と併用することが可能です。

注意点としては、この住宅取得資金等と受贈者が自分の居住の用に供する日本国内の家屋の新築のため、取得のため、または自己の居住の用に供している家屋の増改築の対価に充てるための金銭であり、住宅ローン返済のための金銭の贈与は、この制度の対象外となります。

2.配偶者へ贈与をする方法

夫婦間における贈与についても特別な制度があり、夫の死後における妻の生活保障という観点から一定の要件を満たす場合には、2,000万円までの贈与税の非課税限度額が設けられています。

要件1.夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと。
要件2.配偶者から贈与された財産が、居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること。
要件3.贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおりその後も引き続き住む見込みであること。
(注1)「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地もしくは土地の上に存する権利または家屋で国内にあるものをいいます。
(注2)配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。

(例)夫がサラリーマン、妻が専業主婦の夫婦が5,000万円のマンションを購入する場合、購入するマンションの名義は100%夫となります。そこで、将来の相続税の軽減を考え、妻に2,000万円分をこの制度を利用して贈与をした場合、贈与税は非課税となます。ちなみに、妻に2,000万円の現金の贈与をすると695万円の贈与税がかかるため、相続税の軽減が図られます。

3.相続時精算課税制度の活用方法

財産価値の増加を相続財産の増加に影響を与えない相続時精算課税制度という制度があります。
相続時精算課税制度と聞くとあまり馴染みがない方も多いと思いますが、簡単に言うと生前の贈与については2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができ、2,500万円を超えた贈与に対して一律20%の贈与税がかかります。贈与者が亡くなった時、今まで贈与を受けた金額を相続財産に加算して相続税を計算し、以前に納付した贈与税を差し引いて相続税を納付する制度です。

この制度は、贈与者が亡くなった時に相続税を納付するため、一見意味がないように思われますが使い方によっては大きな節税効果が期待されます。

(例)夫婦で小さな会社を経営しており、安定収入を得たいと夫婦共有で都心の一等地にマンションを1室購入し賃貸する計画を立てています。子供は1人美術大学に通っています。夫は、子供の将来について今の会社を継がせる意思はなく、好きなことをしてほしいと考えています。しかし、親として安定した収入を確保してあげたいという気持ちから、このマンションはいずれ子に託したいと考えています。

<家族構成>
夫:会社経営50歳(戸建所有)
妻:夫の会社の役員48歳
子:1人 22歳
マンションの購入価格:1億円

この例では、相続時精算課税制度を利用しようとした場合、夫婦それぞれがこの制度を利用することができるため、2,500万円分ずつ合計5,000万円を子に生前に非課税で贈与できます。

この相続時精算課税制度のメリットはこの都心の一等地のマンションが将来値上がりした場合でも相続時精算課税制度を利用して贈与した一人2,500万円の価値のままで、相続税の計算をするためマンションが値上がり、マンションの価値が増えても相続税の増加の心配は無いということです。

ただ、逆に値下がりしても当初の2,500円での相続税の計算をしなければいけないため、この制度を利用しなかったほうが相続税が低く抑えられたというケースも考えられます。

相続時精算課税制度の利用については、慎重に検討する必要があります。
ご心配な場合はコンパッソ税理士法人へご相談ください。

渋谷事務所
朝倉 基允

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