アパート建設はなぜ相続税対策になるの?
「アパートを建てると節税になる」という話をよく聞くことがありますが、本当に節税になるのか不安に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。節税効果のひとつとして相続税が挙げられます。相続税の節税対策は相続財産の評価額を減額することを意味しますが、どのような仕組みなのか具体例を挙げてみましょう。
相続財産評価が下がる
例えば、貸駐車場として利用していた土地にアパートを建設する場合などが、「アパートを建てると節税になる」に該当します。ただし、この節税対策は当該土地がアパート経営に適した土地であることが大前提であります。ではどれくらい相続財産評価額が下がるのでしょうか。以下の条件で計算してみましょう。
・土地面積 400㎡
・土地路線価評価 20万円/1㎡
・借地権割合 60%(地域により異なります。)
・借家権割合 30%(令和4年は全国一律)
・建設費用 8,000万円
・建設に係る借入金 8,000万円
・貸家評価額 70%(1-借家権割合)
・建設後の賃貸割合 100%
貸駐車場として利用している土地は自用地評価(相続税の土地評価の「利用区分」のひとつ。自分の土地ということ)になりますので、400㎡(土地面積)×20万円(土地路線価評価)=8,000万円の評価額になります。
8,000万円と評価された土地にアパートが建設され借手が付くと、「貸家建付地」としての評価になります。貸家建付地とは、自分の土地に建てた建物を他人に貸している場合の土地のことです。貸家建付地の価額は次の算式により求めます。
【貸家建付地評価=自用地評価-自用地評価×借地権割合×借家権割合×賃貸割合】
これを計算すると貸家建付地評価は82%になりますので、8,000万円×82%の計算で評価額は6,560万円となります。
建物は建設費用ではなく固定資産税評価額で評価されます。固定資産税評価額は建設費用の50%~70%割程度の価格になることが多いので、仮に70%で計算すると8,000万円×70%で5,600万円。そしてアパート経営が始まり全室入居されれば、貸家評価額70%を乗じた3,920万円の評価になります。
もう一度整理してみます。
建設前 土地8,000万円
建設後 土地6,560万円、建物3,920万円、借入金8,000万円
8,000万-(6,560万+3,920万-8,000万)=5,520万
つまり、アパート経営開始により相続税評価額は5,520万円下がったことになります。節税効果の金額については、相続財産の総額や相続人の人数により異なります。ちなみに、アパート建設途中で相続が発生してしまった場合には、土地は自用地評価の8,000万円のままで評価し、建設中建物については、その建物の費用現価の70%に相当する金額によって評価することとなっています。当然まだ貸していないので貸家評価にもなりません。相続対策として賃貸物件建設を検討されている方がいらっしゃいましたら、税理士などに相談頂することをお勧めします。