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合資会社の無限責任社員が亡くなった場合の相続税・所得税の取扱い

会社の種類は以下のようになります。

会社 持分会社 株式会社
合名会社 合資会社 合同会社
経営と分離 一致 分離
出資 持分 株式
出資者の呼称 社員 株主
責任 無限責任 無限責任
有限責任
有限責任 有限責任
最高意思決定機関 社員の過半数 株主総会
利益の配分 定款で自由に決められる 出資額に比例配分

(*1)無限責任社員とは、会社が債務超過の場合、会社債権者に対して個人財産をもって返済する義務を負う社員のことをいいます。
(*2)有限責任社員とは、会社債権者に対して、出資額を限度に責任を負担する社員のことをいいます。

1. 合資会社とは

合資会社は、無限責任社員と有限責任社員から構成される、社員間の信頼関係により成り立っている人的会社とされています。
定款に「社員が死亡した場合、その持分は相続人に承継される」旨の定めがなければ、社員は、死亡により退社することになります。無限責任社員が死亡により退社すると、当該合資会社は有限責任社員のみとなってしまいます。その場合、無限責任社員と有限責任社員から構成される合資会社の要件を満たさなくなってしまうため、会社法では、合資会社が解散することなく会社を継続できるよう「合同会社となる定款の変更をしたものとみなす」という規定を置き(会社法第639条第2項)、この規定により、唯一の無限責任社員の死亡退社により、有限責任社員のみになった合資会社は、以後、合同会社として存続することになります(会社法第638条第2項第2号)。

2. 有限責任社員と無限責任社員からなる合資会社の社員に相続が発生した場合

平成18年5月1日改正後の会社法において、無限責任社員と有限責任社員とでは死亡時の継承においての区別はなくなり(出資の種類を問わず)、定款に持分継承の定めがない場合、持分は払戻請求権となり、その被相続人の払戻請求権が相続人に相続されます。
 なお、定款に持分継承の定めがある場合のみ、無限責任社員及び有限責任社員の持分(社員としての地位)が継承され、相続人は社員として入社することができます。
(1) 持分の払戻しを受ける場合の評価
この持分の払戻しについては、「退社した社員と持分会社との間の計算は、退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない。」(会社法第611条第2項)とされていることから、持分払戻請求権として評価します。
その価額は、評価すべき持分会社の課税時期における各資産を財産評価基本通達の定めにより評価した価額の合計額から、課税時期における各負債の合計額を控除した金額に、持分を乗じて計算した金額となります。

(2) 持分を承継する場合の評価
非上場会社の取引相場のない株式の評価方法に準じて出資(持分)の価額を評価します。

3. 評価会社が債務超過である場合の相続税

持分会社の社員は、当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負うとされていることから(民法第580条)、相続税の計算において、評価会社の債務超過額は、被相続人の債務として相続財産から債務控除することができます。

4.死亡退社による持分の払戻しと「みなし配当課税」について

所得税法は、現実の収入がなくても、その収入の原因たる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとして課税するという、いわゆる権利確定主義を採用しています。よって、持分会社の社員が死亡退社した場合には、その社員の有していた出資(持分)が死亡と同時に持分払戻請求権に転換し、その転換した時点において、持分払戻請求権の価額のうち元本(出資)を超える部分が、所得税法第25条第1項の規定により剰余金の配当等(みなし配当)として当該死亡社員の所得を構成するものとされています。
つまり、死亡した社員の出資(持分)が持分払戻請求権に転換された時点で、金銭その他の資産が実際に交付されていなくても、みなし配当が発生することになり、このみなし配当は課税の対象となり、相続開始後4ヵ月以内に被相続人に係る所得税の「準確定申告」をしなければなりません。そして、持分会社は、このみなし配当に対して源泉徴収義務を負うことになります。

5.持分払戻請求権に関する所得税の裁決

合資会社の持分払戻請求権の価額のうち元本(出資)を超える部分がみなし配当として死亡社員の所得を構成すると判断した国税不服審判所の裁決(令和4年6月2日)がでております。ご参照して下さい。

合資会社の社員について相続があった場合に、定款の内容によって出資(持分)の評価が変わってきてしまいます。早いうちに確認しておくことをお勧めします。

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