6相続にかかる民法と税法(遺産分割の禁止の取扱いについて)
第6回 遺産分割の禁止の取扱いについて
今回が、相続にかかる民法と税法の関係(全6回)の最終回です。
遺言による遺産の分割禁止について確認します。
目次
相続分の譲渡は、遺産分割争いからの離脱を望む相続人がある場合、また、相続人の数が多く当事者の整理が必要な場合などに行われることがあります。
ここでいう相続分とは、積極財産(財産)と消極財産(債務)の両方を含む遺産全体に対する持分としての相続分で、遺産に含まれる土地、建物といった個々の財産を指すものではありません。
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
1.民法上の理解
遺産の分割は、現物分割などのいくつかの方法、組合せによって行われます。そして、民法では遺産分割の方法及び遺産分割の禁止を遺言によって指示できると定めています。
(1)遺産分割の方法の指定
「〇〇に、□□を相続させる」という「誰に、何を、いくら相続させる」いわゆる一般的な分割方法の指定を被相続人が遺言で定めています。
また、分割方法の指定を第三者に委託することもできます。
(2)遺産の分割の禁止
遺言で遺産の分割を相続開始時から5年を超えない範囲内で禁止することができます。
相続人の事情を考慮し、被相続人があらかじめ遺産分割を禁止する期間を定めておくことです。分割の禁止は、遺産の全てに限らず一部についても可能となります。
2.税法上の理解
被相続人が、遺言において5年を超えない範囲で遺産分割の禁止期間を定めた場合においても、税務上は相続開始から10カ月以内に相続税の申告を行う必要があります。
この場合、当該遺産分割は未分割の状態での申告となり、分割方法が決まり次第修正申告を行います。
未分割での申告時には適用できない配偶者の税額軽減等は、申告期限より3年以内に分割が決まり要件を満たせば適用することが可能となります。
申告期限から3年を超え遺産分割を禁止とする旨が遺言に記載されている場合には、税務上、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けられなくなる可能性がありますので遺言での遺産分割の禁止期間を定める場合には注意が必要です。
相続にかかることで、お困りのことや疑問をお感じのことなど、ご相談はコンパッソ税理士法人までお問い合わせください。
参考文献等:
遺言問題研究会編著 「遺言と相続対策」清文社
関根稔、間瀬まゆ子編著「税理士のための相続をめぐる民法と税法の理解」ぎょうせい
高田馬場事務所 佐藤 和美