採用時の身元保証書における留意点(民法改正)
採用時、皆さんの会社では『身元保証書』に極度額(上限額)を記載していますか?
本年4月より、「保証」に関わる民法の規定が変わり、極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効となりました。この改正を受け、入社時に提出させている『身元保証書』にも影響が及びます。
入社時の身元保証契約とは、
従業員が会社に損害を与えた場合に本人と連帯してその賠償を行うという契約(連帯保証)です。
民法改正により、今後は賠償の極度額(上限額)を定めておく必要があります。
また、「身元保証ニ関スル法律」では、身元保証人保護を目的に、保証人の責任範囲を明確に定めています。
その一部を抜粋すると、
・身元保証契約の期間は、5年を超えることはできない。
・裁判所は、身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定めるとき、被用者の監督に関する使用者の過失の有無、身元保証人が身元保証をするに至った事由及びそれをするときにした注意の程度、被用者の任務または身上の変化、その他一切の事情を踏まえる。
・使用者は、左の場合においては、遅滞なく身元保証人に通知しなければならない。
とあります。
賠償額は会社側が決めるのではなく、企業側に過失が無かったか、身元保証人が保証を引き受けた理由と実際に注意を払えた程度、本人の仕事の変化など一切の事情を踏まえて、裁判所が決定するものとされています。
また、極度額(上限額)を「1億円」と身元保証書に記載することも可能ですが、あまりに高額だと入社時の身元保証人を探すのが難しくなる上、その妥当性においても疑問が生じます。とはいえ5万円程度の少額だと、そもそも身元保証人は必要なのかという事になってしまいます。
身元保証契約を結ぶ意義、目的などを踏まえ、その極度額を考える必要があります。
限度額を定める基準は企業により様々ですが、現実的には数百万円台に設定するケースが多い様です。
この機会に、各社ごと支払いが可能な現実味のある金額で、なおかつ少額過ぎないものを検討してみて下さい。
コンパッソ税理士法人
田中 秀和