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介護事業経営実態調査と介護老人福祉施設の経営

厚生労働省は介護事業について各サービス施設・事業所の経営状況を把握し、次期介護保険制度の改正及び介護報酬の改定に必要な基礎資料を得る目的で、介護事業経営実態調査、介護事業経営概況調査を行っています。
ここ何年かの介護事業経営実態調査や介護事業経営概況調査を調べますと、介護老人福祉施設の利益率は次のようにここ3年1%台で推移しています。

介護老人福祉施設 利益率
平成28年度概況調査(平成27年度決算) 2.5%
平成29年度実態調査(平成28年度決算) 1.6%
平成30年度概況調査(平成29年度決算) 1.7%
令和 元年度概況調査(平成30年度決算) 1.8%

100床規模の従来型の介護老人福祉施設が年間4億円の売上規模と仮定した場合、1.8%の利益率では利益額は720万円の計算になります。
この数値から何が読み取れるでしょうか。
介護老人福祉施設の事業をさらに細分化し、
①介護部門
②食事部門
③居住部門
の3つに分類したとします。

事業全体では1.8%の利益率ですが事業を細分化することにより不採算部門の有無が見えて来ます。果たしてこの3つの各部門は採算が取れているでしょうか。

今回は、このうち③の居住部門をクローズアップし、各部門の採算について考察してみます。

従来型の介護老人福祉施設の場合、居住費としてご利用者からいただける金額は、お一人当たり1日855円です(基準費用額とした場合)。
これに対しこの居住費の原価は、水道光熱費、修繕費、将来の大規模修繕費用等が含まれます。
このうち、水道光熱費はご利用者1人当たりおおむね月額1万円とされ、1日あたりでは約335円の計算になります。光熱水費相当はこの355円の範囲内であれば採算が合います。

次に、この光熱水費相当の335円を基準費用額の855円から差し引いた額は520円になりますが、この金額が当年度の修繕費や将来の大規模修繕に充当出来る金額となります。

100床規模の従来型特養の場合、520円×365日×100床×稼働率95%≒1,800万円となり、当年に全く修繕費がなければ、毎年約1,800万円の修繕積立金が積み立てられる計算になります。100床規模の従来型介護老人福祉施設の介護報酬収益が年額4億円程度だとすれば、1,800万円÷4億円=4.5%の利益率になります。

このことからも経営実態調査、概況調査の収支差率は、介護老人福祉施設の事業全体(①~③)の利益率なのですが、居住部門(③)の利益率より低いことが解ります。

実はこの居住費は平成27年よりホテルコスト相当(修繕費、将来の大規模修繕費等520円)が設定されたのですが、設定後の平成27年度以来、居住部門として想定される利益率4.5%分より事業全体の利益率が低い状況が続いており、居住部門以外の部門(介護部門、食事部門)の採算が悪化していることが見えてきます。
介護老人福祉施設は建物を維持していかなければ成り立たない事業です。職員の方々の持続的な雇用、地域のご利用者に対してサービスの提供を持続するためには、将来の大規模修繕に備えた資金を蓄積し、建物を耐用年数以上維持しなければなりません。不採算部門の赤字を減らし持続的な経営を目指す為に、経営の見える化について私たちはご協力いたします。

参考資料:厚生労働省「介護事業経営実態調査」「介護事業経営概況調査」 
 
横浜青葉事務所 
畠山 安定

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