残業代を正しく計算できてる?残業手当から除外できる手当は7項目だけだった!
割増賃金の基礎となる賃金額を正しく理解しよう
労働者が時間外労働や休日出勤、深夜労働をした場合、使用者は労働基準法 第37条に基づいて、規定された割増率以上の率で算定した割増賃金を支払うことが義務付けられています。
割増賃金の支払い義務については使用者の多くがご存じのことだと思いますが、算定の基礎となる賃金額が誤っていては、残業代を正しく計算することはできません。
実は、算定基礎から除外できる手当は7項目しかありません。今回は、残業代の算出に含めなくてはいけない手当と、除外できる手当についてチェックしていきます。
割増賃金の算定方法について
残業代の算出に含めなければいけない手当と、除外できる手当について説明する前に、割増賃金の算定方法について整理します。
割増賃金は「1時間当たりの賃金額」×「時間外労働、休日労働、深夜労働をした時間数」×「割増賃金率」で計算します。
「割増賃金率」は労働基準法 第37条で明確に定められており、時間外労働の場合が2割5分以上、休日労働は3割5分以上、深夜労働は2割5分以上となっています。尚、1ヶ月当たりの時間外労働が60時間を超えた場合は、60時間を超えた時間数について5割以上で計算しなければいけません(中小企業は猶予期間あり)。
手当の種類と支給状況について
2018年に労務行政研究所が実施した「諸手当の支給に関する実態調査」から、「役付手当(役職手当)」、「特殊勤務手当」、「特殊作業手当」、「年末年始手当」、「宿日直手当」、「通勤手当」、「家族手当」、「住宅手当」、「食事手当」、「呼出手当」、「待機手当」、「精皆勤手当」の支給状況を把握することができます。
支給率は「通勤手当」が最も高く、正社員に対して100%支払われており、「家族手当」、「役付手当(役職手当)」の支給率も高いことが分かります。「待機手当」、「精皆勤手当」は支給率が低く、いずれも5%未満となっています。
尚、会社によっては手当の呼び名が異なる場合があり、上記以外の手当が支給されているケースもあります。
割増賃金の計算から除外できる7つの手当
割増賃金を算出する際の「1時間当たりの賃金額」は、原則各種手当を含める必要がありますが、労働と直接的な関係が薄い7つの手当に限り、基礎となる賃金から除外することができます(労働基準法 第37条、労働基準法施行規則 第21条)。
除外可能な手当は「家族手当」、「通勤手当」、「別居手当」、「子女教育手当」、「住宅手当」、「臨時に支払われた賃金」、「1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」の7つです。
ただし「家族手当」は、社員全員に一律に支給する場合、除外することができません。扶養家族の有無や、家族の人数に応じて支給される場合に限り、除外することができます。
「通勤手当」も、社員全員に一律で支給する場合は、基礎となる賃金に含める必要があります。通勤にかかった費用や、通勤距離に応じて支給される場合は除外対象となります。
「住宅手当」は、住宅の形態ごとに定額支給される場合は除外することができません。家賃の一定割合を負担している場合や、持ち家居住者のローン月額の一定割合を負担している場合は、算定基礎から除外可能です。
まとめ
労働者に支給している手当には、割増賃金の算定基礎から除外できるものと、できないものがあることを見てきました。特に「家族手当」、「通勤手当」、「住宅手当」は除外対象となるか否かの条件が複雑です。不安や不明な点がある場合は、最寄りの都道府県労働局や労働基準監督署に確認すると良いでしょう。
また、給与計算をエクセルで行っている場合は、割増を算定する計算式が誤っている可能性があります。この機会に自社の給与計算方法を見直して、法律を遵守した賃金の支払いができているか確認してみてはいかがでしょうか。
(画像はphoto ACより)