印紙税の契約書
印紙税の課否判断のプロセスをシリーズでご紹介しています。
第1回「印紙税の文書」
第2回「印紙税の契約書」
第3回「印紙税の所属の決定」
第4回「印紙税の記載金額」
第5回「印紙税の非課税文書」
第6回「印紙税の納税義務者」
第7回「印紙税の納税地」
第2回は、「印紙税の契約書」における印紙税の課否判断に特に複数の契約書を作成した場合ついてご紹介します。
印紙税の中でも課税文書にあたる「契約書」とはどういうものなのか・・・。
結論としては、契約書かどうかを判断するポイントは、契約証書、協定書、約定書などの名称ではなく、「内容」での判断となります。
契約書は、契約の当事者がそれぞれ相手方当事者などに対して成立した契約の内容を証明するために作られますから、各契約の当事者が1通ずつ所持するのが一般的です。この場合、契約当事者の一方が所持するものに正本又は原本と表示し、他方が所持するものには写し、副本、謄本などと表示することがあります。しかし、写し、副本、謄本などと表示された文書であっても、以下のような形態のものは、課税事項を証明する目的で作成されたことが文書上明らかなので、印紙税の課税対象になります。
⑴ 契約当事者の双方または文書の所持者以外の一方の署名又は押印があるもの(ただし、文書の所持者のみが署名又は押印しているものを除く。)
⑵ 正本等と相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明(正本等との割印を含む)のあるもの(但し、文書の所持者のみが証明しているものを除く)
なお、所持する文書に自分だけの印鑑を押したものは、契約の相手方当事者に対して証明の用をなさないものですから、課税対象とはなりません。
また、契約書の正本を複写機で複写した場合、複写しただけではこの文書が課税文書になることはありません。これは上記のような「署名又は押印」とはいえないからです。これは単なる写しにすぎませんから、課税対象とはなりません。契約当事者がこの写しに改めて「署名又は押印」をすることで、上記の要件を満たし、課税文書となります。
同様に、FAXや電子メール等により送信する場合も正本等は送付元に保存され、送付先には交付されておらず、送付先で出力された文書は写しと同様であり、課税対象とはなりません。
このように、印紙税は、契約の成立を証明する目的で作成された文書を課税対象とするものですから、一つの契約について2通以上の文書が作成された場合であっても、その全部の文書がそれぞれ契約の成立を証明する目的で作成されたものであれば、すべて印紙税の課税対象となります。(印紙税基本通達第19条)
以上、「契約書」についてご紹介しました。ご不明点はコンパッソ税理士法人までご照会ください。
参照
国税庁HP No.7120 契約書を複数作成した場合の課税関係
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7120.htm
「実務に活かす印紙税の実践と応用」鳥飼総合法律事務所著 新日本法規
高田馬場事務所 芝田久美子