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就労継続支援B型の工賃は消費税計算において課税仕入れに該当するか

就労継続支援B型とは、通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う事業とされています。

就労継続支援B型は、障害者自立支援法における他の就労系サービス(就労移行支援、就労継続支援A型)と比較して事業所数・利用者数が圧倒的に多く、さらに事業所数・利用者数ともに年々増加している中、表題の件について疑問に思われている事業者の方も多いのではないでしょうか。

さて、この疑問を解消するには就労継続支援A型において利用者に支払われる対価と比較すると分かりやすいかもしれません。
就労継続支援A型は、法人と利用者間において雇用契約を締結するため利用者に支給される対価は給与に該当します。従いましてその支払った給与は消費税上不課税取引となり仕入税額控除はできません。

一方、就労継続支援B型はどうでしょうか。A型と異なり雇用契約を締結しないため、支払われる工賃は給与には該当しません。
給与に該当しないこと、また、就労継続支援B型の工賃は雑所得に該当するため確定申告が必要だと言及している自治体もあることから、業務委託の類の役務の提供なのではないか、課税取引なのではないかとの疑問が生まれても不思議ではありません。

この件に関し、名古屋地方裁判所で裁判が行われ令和6年7月18日に判決が下りました。以下、判決内容の一部を抜粋します。
「各事業所の利用者は、請負、委任等の契約を締結して生産活動に従事し、役務を提供した反対給付として工賃を受領しているのではなく、福祉サービスの一環として、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した残額(剰余金)の分配として工賃を受領していると認めるのが相当である。」【出典:TAINS|判決・裁決詳細】

 判決では、役務の提供では無く課税取引に該当しないとされました。全国でも初の裁判でもあり、長年判断に迷われた事業所の方々も判断に迷わずに済みそうです。(ただし高裁に持ち込まれる見込みで、そちらの判決にも注視する必要がありそうです。)

 表題からは脱線しますが、この判決内容により、就労継続支援B型の工賃が家内労働法に規定されている工賃と同様とし雑所得として取り扱うことに対して、私は違和感を抱いています。今般の判決では、就労継続支援B型の工賃が剰余金の分配であるの考えが示されたことから、雑所得なのか一考の余地があるのではないかと考えます。

所得税法第34条(一時所得)
一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。

横浜青葉事務所 畠山 安定

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