選ばれる保育所になるために
最近、顧問先の保育所でよく話題になるのが「定員充足率」についてです。
保育所を取り巻く環境においてはこれまで「待機児童の解消」がメインテーマで、そのために小規模認可保育所を含めて多くの保育所が整備されてきました。
しかし最近では逆に、定員充足率が100%を切ることも多くなり、このことが経営の悩みの種になってきている園も増えてきているように感じます。上記のように施設が整備されてきたことや、そもそも少子化が進んできていることも要因の一つかと思われます。
ただ一つ言えることは、これまで以上に園が「選ばれる」ようになってきているということです。
そしてこれは今後の経営に直結する問題でしょう。
では、「選ばれる」(立地等除く)には、どのような要素が必要となるのでしょうか。最近、社福の顧問先さんでは保育所に限らず介護事業なども含めて、よくこのような議論になります。それだけ、取り巻く状況が厳しくなってきているからなのだと思います。
様々な話は出てきますが、おおよそ以下の要素に絞られてきます。
1 利用者(保護者)から好まれていること
2 職員が満足して働けていること
3 地域社会からも信頼があること
4 法人が存続・発展成長していくこと
少し掘り下げると、1~3を満たした延長線上に4法人の存続と発展成長があるのだと思います。そして、1,3を目指すには2が満たされていることが前提になるのではないかと思います。なぜなら職員が何かしらの不満を持った状態では、よいサービス(保育)の提供ができないからです。
そこで今回は、会計・経営の観点も含めて、2について少し深掘りしてみたいと思います。
~職員が満足して働けていること~
保育所に限りませんが、人材が不足している今、職員確保は法人の生命線となり得ます。そして、当たり前のように聞こえますが、そのためには職員が満足して働けているか、が重要になります。
では、この「満足」とは何をもって「満足」となるのでしょうか。逆に言うと、「不満」に思っていることは何か、そしてそれを解消できれば「満足」につながることにもなります。
職員の満足、不満についてはこれまでにも様々なところで調査が行われていますが、総じて以下の項目が挙がっています。
・ 給与面(低い)
・ 人間関係(が悪い)
・ 残業・業務持ち帰りが多い
・ 保育の方針が合わない、理解できない
この中で特に「残業・業務持ち帰りが多い」は、会計面からみても改善可能性を検討すべきところかと思います。そして、その業務に対して手当がつかない、というコメントも多くあります。
そのことが、実際に行っている業務に対して得られる給料が少ないと感じられ、結果として「給与が低い」というコメントが出てくる部分もあるのかもしれません。
残業や業務持ち帰りは、単に業務時間が増えるだけではなく、職員さんご自身の時間も奪うことになり、割増で手当がついたとしても、見えないところでダメージを負わせる可能性があります。
残業が多く発生している場合、何が原因なのかをはっきりさせることが大事です。業務洗い出しを行い、時間の使い方の検討、場合によっては外注可能な業務であればその検討も有用です。
もちろん委託費用は発生しますが、その見合いとして職員の負担減、残業手当減少の効果があります。試算表で毎月チェックしながら、そして職員の様子も見ながらその効果測定を行ってみましょう。
そしてさらに、職員負担が減少したのであればその分は、保育そのものに注力できる力になり得ます。保育士という職業の「やりがい」として、園児の成長を感じること、保護者に喜んでもらえること、行事やイベントをやり切ることでの達成感を得られること、などがよく挙げられますが、この「やりがい」を得られることが職員のモチベーションにつながり、定着化にも結びつき、そして保育の質を上げる原動力になるでしょう。
また、園児や保護者に向き合える時間が少しでも増えれば、よりきめ細かい保育・保護者対応が可能になり、保護者満足度を上げられる余地もでてきます。
場合によっては一時的に費用が多めに発生することもありますが、定員の充足率が上がれば中長期的には経営面でもよい効果が見込めることになります。そのためには、毎月の試算表とともに、年間の予測表のようなものも作成して常に先を見据えることも必要です。
外注化は、あくまでも例であって必ずしもそれを推奨するというわけではありませんが、必要に応じてそれも検討するというスタンスを持ち合わせることも一案かと思います。
コンパッソ税理士法人 横浜青葉事務所
砂田