コラム

COLUMN

  1. HOME
  2. Knowledge
  3. コラム
  4. 身辺調査はどこまで許される?違法にならないための条件とは?

身辺調査はどこまで許される?違法にならないための条件とは?

企業が採用活動を行う際、中途採用者は社会人としての経験がある分、即戦力になりやすいので、企業にとっての大きな労働力になります。

しかしその経歴に「短期間で離職している回数が多い」「転職の経歴に空白の期間がある」など不審な点があると、採用に踏み切るべきかどうか迷うこともあります。また、前職での応募者の素行や人となりも気になるところです。

今回は中途採用者の身辺調査について、違法にならないための条件や注意点についてご紹介していきます。

前職調査を行うことは許される?

中途採用者の場合、どのような経歴を積んで自社への就職を希望してきたのかが気になるところです。

前職調査は、応募者の経歴や履歴書の記載内容、面接時に話す内容が事実であるかを確認するために行います。また、前の職場での評判やトラブルの有無などを調査することも含まれます。したがって前の会社での雇用期間や、業務内容、前の会社での地位や賃金に関することなど、労働能力や適格性などの判断に影響する事項を調査することは、違法ではありません。

近年は個人情報保護法の施行により、応募者の身辺調査を行う企業は少なくなってきました。しかし、経歴詐称による会社へのダメージを防ぐため、入社前に応募者の身辺調査を行っているケースも見られます。

しかし採用予定の会社が、応募者本人の同意もなく、中途採用者の前の職場に電話をしたり直接出向いたりして、退職した理由や人間関係などの情報を聞き出すことは、中途採用者にとって不利益になる行為であり、そのような調査をしてはいけません。

前の職場を退職した理由について明確に確認したい場合は「退職証明書」を発行してもらいましょう。退職証明書には以下の項目が記載されており、会社を退職したことの証明になります。

・使用期間
・業務の種類
・その事業における地位
・賃金
・退職の事由

なお、中途採用者の同意がある場合に限り、前の職場における素行やトラブルの有無を電話などで調査することは可能です。

身辺調査は違法なのか

応募者の身辺調査を禁止する法律はありません。しかし、調査を行う上で法に触れる項目があれば違法とみなされることもあります。身辺調査が違法か否かを問われるようになった背景には、個人情報保護法の施行があります。個人情報保護法に違反しないために、身辺調査を行う際は特定の事項を満たしている必要があります。

厚生労働省では応募者に対し、公正な選考が行われるように、採用選考時に配慮すべき事項として以下のことを設けています。

本人に責任のない事項
本籍・出生地、家族に関すること、住宅状況、生活環境・家庭環境などに関すること

本来自由であるべき事項
宗教、支持政党、人生観や生活信条に関すること、尊敬する人物、思想、労働組合や学生・社会運動、購読新聞・雑誌・愛読書など

採用選考の方法
身元調査などの実施(「現住所の略図」は身元調査につながる可能性あり)、合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

これらの事項を面接で尋ねたり、履歴書や応募用紙に記入させたりすること、また身辺調査を実施することは、就職差別につながるおそれがあるので注意が必要です。

身辺調査が違法にならない条件とは

応募者の身辺調査は、本人に通知をした上で同意を得ていれば違法にはなりません。また、身辺調査の利用目的を伝え、目的以外に使用しないことや調査結果の事実を伝えることを条件とした場合も違法にはなりません。

しかし、個人情報保護法の中でも、特に慎重に扱うべき「要配慮個人情報」には注意が必要です。要配慮個人情報とは人種や信条、社会的身分、病歴や犯罪、犯罪の被害者となった事実のほか、身体や知的または精神障害があること、健康診断やその結果など医療に関する情報などを指します。

これらの要配慮個人情報を取得する際は、本人へ通知した上で同意を得ることが必要です。また、要配慮個人情報の利用目的を伝え、目的以外に使用しないことが条件になります。

要配慮個人情報は、扱い方によって本人が不当な差別を受けたり、偏見や不利益が生じたりするおそれがあり、会社が身辺調査での取り扱い方法を間違えると、違法となり、民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。

探偵に頼むことでリスク回避

自社で身辺調査を行う場合、時間や労力がかかる上に、どこまでが合法的に許されるのかが不安でもあります。違法になるかもしれない不安を抱えて身辺調査を行うよりも、費用はかかりますが探偵や興信所に頼むことで不要なリスクを回避できます。

探偵が身辺調査を行うことは違法ではありません。警察庁は個人情報保護法の施行に当たり、「興信所業者が講ずべき個人情報保護のための措置の特例に関する指針」という通達を出しています。

そのため探偵業者は、社会的差別につながるおそのある「要配慮個人情報」については取り扱いませんが、中途採用者の身辺調査や素行調査に関しては、対象者に通知しなくても調査が可能です。探偵業者に頼むことは、中途採用者の同意がなくても身辺調査ができ、違法にならない調査を行えることが大きなメリットです。

まとめ

近年、中途採用者の身辺調査や前職調査を行うことは、個人情報に触れる可能性があるとして、トラブル回避の面から導入する会社は減少しつつあります。

しかし企業には採用の自由があり、選考時の判断や採用後のリスク軽減のためには有効な手段です。中途採用者についての精度の高い情報が得られ、不安なく採用ができることは、企業にとってのメリットであるといえます。

一方で中途採用者には人権があり、本人の同意なしに身辺調査を行うことは、違法となる上に、中途採用者は就職差別を受け、プライバシーを侵害されたと心理的損害を受けてしまいます。

中途採用者の身辺調査は、法を遵守した慎重な対応が求められます。自力での調査が不安だったり困難だったりした場合は、費用をかけてでも探偵業者など外部の力を借りることも検討してみましょう。

(画像は写真ACより)

関連記事