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【SDGs】未来のゆたかさのために

SDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
前身のMDGsは貧困や飢餓の撲滅といった途上国支援がメインでしたが、SDGsでは環境や福祉、技術革新など対象が広くなったことで、より身近な問題となりました。また、政府は企業への積極的な関わりを求めており、経団連が会員企業に対してSDGs目標達成に向けた活動を促すなどしています。
こうした潮流の中で、中小企業はどうSDGsに取り組んでいくのか。中小企業の支援を命題に掲げるコンパッソとして考えてみました。

 中小企業がSDGsへの取組みを考えるとき、「エシカル(倫理的な)な活動」よりも、「利益につながる活動」という動機付けの方が強くなります。それは、資金に余裕のない中小企業にとっては当然のことです。
一方で、「エシカルな活動」を実行することで、新たな方向性を生み出した企業があります。それが、株式会社山櫻(東京都中央区)です。

 株式会社山櫻は1931年創業の名刺・はがき・封筒など事務用紙製品の製造販売を行う会社です。
自然資源を使った製品を製造販売する企業だけに、環境保護への関心は以前から高かったそうです。1990年に、古紙を利用した名刺の販売を始めました。当初は人さまにお渡しする名刺に古紙を使うなどもっての外だといった声もあったそうです。しかし、森林保護への注目が高まりだすと、多くの企業が再生紙を原材料とした製品を使用したいと変わっていきました。再生紙への需要が高まる中、2008年に古紙配合率偽装問題が発生します。社長の市瀬氏は、当時の状況を振り返り、「この問題を機に真の環境保護とは一体どういうことなのか考えさせられた」とおっしゃいます。

 真の環境保護を考えた結果、2012年にバナナの茎からとった繊維で作る「バナナペーパー」製品の販売を始めます。市瀬氏自らザンビアへ行き、現地の状況を視察して環境保護だけでなく、貧困・教育・健康などの問題に触れ、製品の販売を通じて、これらの問題の解決を決意したそうです。バナナペーパーは廃棄されるバナナの茎を日本の和紙技術を用いて紙にした製品です。これは日本で初めて紙の分野でフェアトレードの認証を受けました。活動を開始して、約10年がたち、当時の子供たちが必要な教育を受けられるようになったことがとても感慨深いと市瀬氏は仰います。

 持続可能な社会の実現を目指した製品はコストが上がります。利益を追求する企業にとって、本来ならばコスト高は避けるべきことです。これらの経営判断について市瀬氏は、「価格競争は消耗戦。それよりも、『よりよく生きる』事、地球の未来を考えた事業をするべき」と語ります。
創業者である祖父の教えと実業団まで続けたラグビーの精神が、経営者としての市瀬氏をつくり、100年を目指す老舗企業を動かしています。
 
 ペーパーレスの時代となり、紙製品を販売する同社は苦しい事業展開となることが予想されます。しかし、あえて紙を使うことでSDGsに貢献できるという新しい価値観を生みだすことができました。それは真に社会貢献となることを実行してきたからこそだと感じます。見せかけの活動では従業員も顧客もついていかなかったでしょう。

株式会社山櫻
https://www.yamazakura.co.jp/

右:株式会社山櫻 代表取締役社長 市瀬豊和 さま
左:コンパッソ税理士法人 代表社員 若林昭子

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