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キャッシュレス化と今後の日本

 皆さんは一体どの程度「電子マネー」の活用をしていますか?まだまだ、活用していない人も多いのではないでしょうか?たまに「日本では電子マネーは普及しにくい」などといった意見聞きます。しかしそれは、遅いか早いかの些末な論点であり、近い将来キャッシュレス化の波は必ず来ることとなります。

 電車の中でスマートフォンを握り、当たり前のようにインターネットやショッピングを楽しむ時代が想像できなかったのと同じように、「目に見える通貨がこの世界から無くなる」と言った一見信じられない時代が来るのも、そう遠くはないでしょう。
 
1.国外の電子マネー
 「電子マネー」と言えば中国です。近年、中国ではスマートフォンの爆発的な普及と同時に、電子マネーのインフラが目まぐるしく整備されました。もはや中国市場では、電子マネーで決済を済ませることが〝当たり前〟というところまできています。また、インドも2022年までに、携帯電話、スマートフォン、インターネットの利用者が中国に次いで世界第2位になると予想されています。現在は、電子決済や電子商取引の普及・拡大を加速させ、キャッシュレス化に懸命に取り組んでいます。
 2015年の時点で、上位から韓国、中国、カナダ、イギリス、オーストラリア、スウェーデン、アメリカ、フランス、インドといった国々が、キャッシュレス比率で高い数値を記録しており、そのうち韓国からオーストラリアは既に50%超えています。
(※経済産業省「キャッシュレスの現状と今後の取組」参照)
またキャッシュレス化は先進国だけの話ではありません。発展途上の国々でも、スマートフォンの普及に伴い、目覚ましい勢いでキャッシュレス化が進んでいます。
世界的に見ても、多くの国がキャッシュレス化の方向に進んでいると言えます。
 
2.日本のキャッシュレス化の現状
 では日本はどうでしょう?実のところ、日本の電子マネーの普及率は中国と比較して、かなり遅れをとっています。10年前には、携帯電話をかざすだけで買い物ができる「おサイフケータイ」や、改札を通れる「モバイルSuica」といった仕組みをいち早く取り入れ、「世界でもっともモバイル決済が進んだ国」と言われた日本でした。しかし、現在の日本市場における電子マネーの普及率は6%であるのに対し、中国市場は98.3%という驚きの数字が出ています。(※日本銀行発表レポート「モバイル決済の現状と課題」参照)
 ではなぜ中国では電子マネーが普及し、日本では普及しないのでしょうか?
その理由として日本銀行の発表レポートにでは、3つの理由をあげています。

  1. モバイル決済を利用できるようにする初期設定が難しい
  2. 機種変更時の作業が煩雑
  3. 支払いは現金でしたい

 つまり、使うのが難しく、面倒な上に、現金やクレジットカードといった、現在普及している支払い方法を上回る利便性が感じられないといった具合です。
他にも大きな理由の一つに「日本の治安の良さ」が挙げられます。日本では現金を持ち歩いていても、「盗まれる」などの被害に遭うことは稀です。その為、キャッシュレス化に対する意識が他国に比べ薄いのも、原因のひとつと言われています。
 中国の電子マネーが普及した背景には、経済に大きく関わるほど大量の「偽札」が出回ったことがきっかけだとされています。キャッシュレスであれば偽造を渡されることはなく、お金を受け取るのは銀行からなので偽札を心配する必要もなくなります。その為、安心・安全を考えれば電子マネーやクレジット決済がいいと思う人が増え、キャッシュレス化に拍車をかけました。中国では露店でさえ、電子マネーが使えるほどの普及率を見せ、一部ではご祝儀でさえ電子マネーで支払うという事態まであったそうです。
 
3.電子マネーのセキュリティ
 「目に見えない通貨」と聞くと仮想通貨を想像する人も多いのではないでしょうか?
2018年1月に起こった仮想通貨取引所大手企業のNEM 580憶円流出事件はまだ記憶に新しいと思います。電子マネーの普及に伴い、セキュリティの問題は切り離せない存在ですが、中国ではどのような決済が行われているのでしょうか。
中国では電子マネーの決済方法として「QRコード」を使用しており、広く利用されています。
 QRコードとは従来のバーコードと異なり、縦軸と横軸の2次元で情報を記録します。QRコードは主に正方形の形をしていて、小さな四角形のドットを配列することで文字や数字を表現しています。この方式を用いることで、バーコードの数十倍~数百倍の情報量を扱うことが可能になりました。
 中国では電子マネーの決済方法として、主に店舗が提示するQRコードをお客様に読み取ってもらう方式と、お客様のスマホアプリに表示されたQRコードを店舗が読み取る方法の2通りで行われます。
お客様はQRコード決済アプリに、あらかじめクレジットカードや銀行口座を登録しているため、現金がなくても買い物が可能になるといった具合です。
しかし、キャッシュレス化のキーとなるQRコードですが、当然ながらセキュリティにも注意を払う必要があります。QRコードを作成する際に不正な操作を加えると、本来の情報に加え、偽の情報の仕込むことができることがわかっています。
 QRコードは一見しただけでは内容がわからない為、誘導された先が正しいかどうかチェックを強化する必要があり、実際中国でも、改ざんしたQRコードを正しいコードの上から貼り付ける手口で、代金をだまし取られる被害も出ています。
 今後、日本でもQRコードを使った電子決済が急速に拡大する可能性があり、このようなセキュリティ上の弱点が存在することも意識していく必要がありそうです。
 
4.キャッシュレス化と今後の日本
 まだまだ課題も多いキャッシュレス化ですが、電子マネーやクレジットカード、デビットカードなど現金を使わない決済手段は、レジでの煩雑な小銭のやりとりが必要なく、自宅にいながらネット通販で支払いができるなど、便利な存在です。
 日本の消費全体における「キャッシュレス」の決済比率は年々上昇しており、2008年は11.9%でしたが、2016年には全体の20%に達しています。
(※経済産業書「キャッレス化の現状と推進」参照)
 
 一方、支払を受ける店舗側についてのメリットはどうでしょうか。
 店舗側も現金管理の手間や盗難のリスクを減らせるというメリットがあります。さらに、売上データやビックデータ化も容易になるので、購買行動を分析することで売上を増やし、仕入れの効率につなげることもできます。通貨を使わずに買い物ができることで利便性が高まり、観光産業や消費にも良い影響を期待できることでしょう。
 
 2017年に閣議決定された安部内閣の成長戦略「未来投資戦略2017現実に向けた改革」では、戦略分野のひとつ「Fintech(フィンテック)」の中で、今後10年間(2027年6月まで)でキャッシュレス決済比率を現状の倍となる4割程度を目指していくことが示されました。クレジットカード利用時に加盟店に課せられる書面交付義務を緩和し、カード決済のコスト削減につなげる他、消費データの利活用やレシートの電子化を進めるための環境設備も進めていくとされます。
また、2019年10月の消費税引き上げに際して、キャッシュレス決済した消費者へもポイント還元の検討をしているなど、キャッシュレス化の促進を促しています。
 
 2019年9月にはラグビーワールドカップ、2020年にはオリンピック、2025年には大阪万博と世界中から多くの人が来日するイベントを目の前に、日本のグローバル化が試されるのではないでしょうか。
 

東京練馬事務所 野村 佑一

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