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ひとり経理経験者に聞く手書き伝票のやめ方

伝票の起票や管理に疑問を感じたことはありませんか?伝票起票は煩雑な作業のうえ、管理にも場所を要し、使い道が限られるなど、「必要ないかも」と考える人も多いのではないでしょうか。会計ソフトの機能活用やクラウド会計の導入で、伝票レス化を実現することもできます。

今回は、ひとり経理経験者の方に、煩雑な業務から抜け出すための取り組みについて伺いました。ぜひ参考にして、経理業務の効率化を図りましょう。

伝票作成の非効率性

Q伝票作成を見直そうと思った理由を教えてください

これまで、伝票の起票は手書きでおこなっていました。市販の伝票を利用し、狭い摘要欄に小さな文字で必要事項を記入して利用します。書き間違えれば赤の二重線と訂正印が必要です。パソコン入力が主流となったこの時代で、わざわざ手書きで伝票を起こすのは、正直面倒だと思ってはいましたが、その必要性まで考えることはありませんでした。

月日が経ち、ひとりでおこなう作業が増えはじめたころのことです。決まって10日頃になると、経営者から「月次決算の報告はまだ?」と言われるようになりました。そこで、とにかく月次決算の報告を早く出すことを優先することにします。すると伝票を起票せず、請求書や口座の照合表を見ながら、直接会計ソフトに仕訳を入力することが増えました。体裁を整えるため、そのあと伝票を起票するのですが、何度もそんなことを繰り返しているうち「後から作る伝票は果たして必要なのだろうか」と思い始めました。伝票は会計ソフトに入力したあと、利用することがなかったからです。
伝票を起票するにはまず金額を記入し、借方と貸方それぞれに対応する勘定科目と番号が振られたゴム印を押します。ゴム印は資産・負債・費用などカテゴリーごとに分けて箱に収納されていますが、数十本の中から使用する1つを探し出すのにも時間を要しました。借方と貸方それぞれに金額の合計を出し、左右の合計が一致するかも確認します。これも電卓で計算して記入するのです。こんなに多くの工程を経て完成する伝票ですが、会計ソフトへの入力が完了すると必要なくなるのです。入力する際には、ゴム印にある勘定科目の番号を使うと、入力が簡単にできるという利点以外、必要性を感じなくなったのです。

手書きからパソコンを使っての作成へ

Qどのようにして手書き伝票をなくしたのでしょうか?

この面倒な作業を減らすため、まずは手書きしていた伝票をパソコンで作成できないか考えました。エクセルで似たような書式を作り、合計欄には自動的に合計金額が表示されるよう数式を入力します。勘定科目を入力したらその番号が表示されるよう、関数を使って設定しました。ひと月分の取引を伝票に入力すれば、その月以降は似たような流れで会計が進んでいきます。ゴム印を探したり、金額の合計を出したりする手間が大幅に減り、作業がスムーズに流れるようになりました。

手書きからパソコン入力への切り替えと同時に取り組んだのが、会計ソフトの使い方の見直しです。よく使う仕訳をマスター登録したり、あらかじめ予約伝票を登録して自動的に起票されるようにしたりして、仕訳が自動的に生成されるよう設定しました。そのおかげで、ますます伝票の必要性が薄れてしまったのは、いうまでもありません。

伝票起票の手間は減ったものの、それが「必要なのか」という疑問は拭えませんでした。さらに、伝票は7年間の保管が必要な書類です。仕訳帳の代わりに発行して保管する場合は10年間保管する必要があります。保管するにはそれだけの場所が必要になるのです。また、破棄する際は何時間もかけて大量の伝票をシュレッダーにかけます。この作業にも必要性を感じられず、伝票作成の非効率性をひしひしと感じました。

クラウド会計導入による伝票レス化の加速

Qクラウド会計導入後はどのように変わりましたか?

クラウド会計が導入されると、ますます伝票は必要なくなりました。現金や預金の出入りに合わせて仕訳が自動的に立ち、確定をするだけの仕様になったのです。その他の振替伝票もマスター登録しておけば、毎月難なく起票できます。勘定科目の入力も、番号入力ではなく勘定科目そのものを入力する形に設定できるため、いよいよ伝票を起票する意味がなくなったように感じたのです。

伝票起票をやめれば、作成の手間が減るだけでなく、保管場所の確保や破棄する手間も省けて効率的です。ただし、それには経営者の許可が必要でした。

Q経営者の理解はどのようにして得たのでしょうか。

経理業務の煩雑さや手間は、なかなか経営者には伝わりませんでした。また、何十年も続けてきた業務をやめるには不安があったようです。そこで、次の3つを伝えてみました。

  • 銀行との提携で起票がより確実になった
  • 自動で仕訳が起票されるため、伝票を使って仕訳を入力する作業が飛躍的に減った
  • 伝票を起票する手間が省ければ、その分月次決算報告までの時間を短縮できる

いつもより5日程早く月次決算報告を提出し、その報告とともに伝えたのです。これは経営者に響いたようで、伝票レス化の許可を取り付けることができました。

Qさいごに、手書き伝票を効率化したご感想を教えてください。

伝票の起票は煩雑な経理業務を増やすだけでなく、その管理も同じように手間がかかります。伝票起票の工程を減らすことで、5日間の効率化にも繋がりました。伝票レスで会計業務をすすめられるのは、ひとり経理の利点であると言えます。複数人で管理する場合、誰がどこまでの業務をおこなったのか把握するため、伝票を利用するのが便利だからです。また、クラウド会計を使わなくても、会計ソフトの機能を十分理解し活用すれば、もっと便利に使えたのかなと思うこともいくつかありました。ヘルプデスクなどを活用し、効率化を図るのもよい方法でしょう。

いつもおこなっている作業でも「本当に必要な作業なのか」を見極めることが、ひとり経理の煩雑さから抜け出す一歩なのかもしれません。

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