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インボイス制度 旅費交通費精算のポイント

1.はじめに

旅費交通費の精算は、日本全国どこの会社でも広く大変日常的に行われている業務取引だと思います。しかし、適格請求書等保存方式(インボイス制度)が2023年10月1日から開始されると、現行制度からいくつかの変更が行われるため、お客様からも経費精算を今まで通りの方法で行っていてよいのかというご質問をもしばしばいただきます。今回は、旅費精算においてインボイスが必要になる場合や、実費相当額を支給した場合の特例の適用の可否など、インボイス制度開始後の旅費交通費精算のポイントについて説明します。

2.旅費交通費にインボイスは必要か

現行では取引価額が3万円未満の場合や、請求書等の交付を受けられないことのやむを得ない理由があるときは、請求書がなくても一定の帳簿保存で仕入税額控除が認められます。これがインボイス制度開始後は、帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされます。

ただし、請求書の交付を受けることが困難であるなどの理由により、たとえば次の取引については、引き続き一定の帳簿保存で仕入税額控除が認められます。

<帳簿の保存のみで仕入税額控除が受けられる取り引き>
①3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
②入場券等が使用の際に回収される取引(①に該当するものを除きます。)
③従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)
④その他一定のもの

たとえば高速道路の通行料金が3万円未満だった場合です。これまでは領収書の保存がなくても仕入税額控除が可能だったところ、今後は領収書(ETCの場合はETC利用照会サービスの利用証明書)が必要になります。
国税庁よりETC利用については、ETC利用照会サービスの利用証明書とカード利用明細書を合わせて保存しておくことで、仕入れ税額控除が可能という見解がだされました。(2023年9月15日 https://www.etc-meisai.jp/news/230915.html

ちなみに、「公共交通機関」は船舶、バス又は鉄道に限られ、飛行機の場合は3万円未満でもインボイスが必要です。

①の3万円未満の公共交通機関による旅客の運送については、インボイスの交付義務が免除されているため、仕入側の事業者は帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能です。この特例の適用には、①~④のいずれの特例を適用するかを明らかにするため、帳簿に「公共交通機関特例」等と記載することが必要と考えられます。また、3万円以上の公共交通機関を利用した場合でも、乗車券等の交付を受けその乗車券等が回収される場合は、②の「入場券等特例」により帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能ですが、この特例の適用にも、帳簿に「入場券等特例」等と記載するほか、仕入の相手方(公共交通機関)の名称や住所の記載も必要になるでしょう。

3.従業員の立替とインボイス

旅費交通費については、従業員が各自で公共交通機関の乗車券を手配し、後日精算する方法をとっている会社が多いと思われます。従業員が旅費交通費の立替払を行っている場合、原則として事業者宛のインボイスがないと事業者は仕入税額控除ができません。

したがって、事業者が仕入税額控除を行うには交通事業者が発行する従業員宛のインボイスに加え、従業員が作成した「立替金精算書」の保存が必要となります。この「立替金精算書」は、具体的な様式が規定されているものではありません。従業員宛のインボイスが事業者のものであることを証明するためのものなので、作成者名・利用日・利用内容及び支払金額等が記載されていれば、従来通りの経費精算が可能と考えられます。

4.出張旅費の支給は仕入税額控除できるか

出張旅費の支給であれば、課税仕入の相手方は従業員となるため「通常必要であると認められる部分」の金額については、帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能です。この特例を適用する場合も、通常の記載事項に加え帳簿に「出張旅費等特例」などと記載することが必要となります。

渋谷事務所
柳下 稔人

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