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非居住者への退職金

非常にレアなケースになりますが、非居住者(※)が国内勤務に係る退職金を受領した場合の課税関係についての相談を先日頂きました。

※非居住者とは、居住者以外の者を言い、居住者とは国内に住所(個人の生活の本拠を言い、生活の中心がどこにあるかの客観的事実によって判断されます)を有し、または現在まで引き続き1年以上居所(生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所)を有する個人を言います。

所得税については、退職所得の選択課税を行うことで、居住者と同じようなメリットを受けることができます。2018年11月26日掲載ナレッジ「非居住者の退職所得の選択課税について」こちらに詳細記載がありますので、ご参照ください。

そこで今回は住民税の取り扱いをご紹介したいと思います。

1.退職所得に対する住民税の基本的考え方

住民税は基本的に、前年(X年)中の所得に対してその翌年(X+1年)に課税する、いわゆる前年所得課税主義をとっており、翌年(X+1年)1月1日現在で住所がある都道府県及び市区町村への納税義務が生じます。

しかし、退職所得については、退職により所得の発生した年に課税することとする現年分離課税主義をとっており、退職手当等の支払いを受けるべき日の属する年(X年)の1月1日現在における住所地の都道府県及び市区町村への納税義務が生じます。

そして所得税と同様に、退職所得に対しては退職金等を支払う会社が源泉徴収して納税する源泉分離課税(源泉徴収され、他の所得とは区分して課税関係が完結する)となります。

2.非居住者への退職所得に対する住民税

居住者とは異なり、退職手当等の支払を受けるべき日の属する年(X年)1月1日現在において国内に住所がない場合には、分離課税の対象とはならず、基本的に課税対象となりません。

また、X年1月1日現在は住所があったが、その後出国して非居住者となった後に退職手当等の支払いを受ける場合も、基本的には課税対象となりません。

しかし、その後翌年(X+1年)1月1日までに帰国した場合には、総合課税(他の所得と合算して課税)の対象となり、自身で住民税の確定申告(※)を行う必要があります。
 ※具体的な方法は、その人が居住する住所地の市区町村に確認ください。

3.その他の住民税における注意点

出国する際には所得税と同様に納税管理人の届出が必要となります。

納税管理人とは、納税義務者に代わって、納税に関する一切の手続き(納税通知書の受領、納付、還付金の受領など)を行う人を言います。

一般的に納税義務者と同じ区市内の者を選任する場合には「納税管理人申告書」の提出、違う区市内の場合には「納税管理人承認申請書」を提出して承認を受ける必要があります。

また、出国するタイミングなどにもよりますが、納付に支障がない場合には「納税管理人に関する認定申請書」を提出して認められることで納税管理人を定めない場合もあります。

退職金の支払を行う会社側の視点でお話ししますと、ご紹介しましたように非居住者への退職手当等については、住民税は源泉分離課税とはならないため、住民税を特別徴収する必要はありません。しかし、所得税は国内勤務対応分に対して20.42%の源泉徴収が必要な点にご注意ください。

なお、国外現地での税務手続き(課税関係)は、別途確認が必要であることにご注意ください。

渋谷事務所
大橋 暁

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