所得税法の基本原則について
所得税は国の税収の3割超を占めている代表的な直接税であり、国の財政・運営においても重要な位置にあるほか、所得税が公平負担の要請に最もよく適合している税金となっているため、今後の財政再建の議論においてもその中心となっています。この所得税法の基本原則は次の諸点を柱としています。
1 所得の分類と所得金額の総合
一括りに所得といってもその源泉は利子・配当・地代・利潤・給与等の反覆的・継続的な利益、キャピタルゲインのような一時的・偶発的な利益、その他恩恵的な利益があります。
現状の所得税法ではそのすべての所得に対して課税される法律になっていますが、その利益の側面を考えて、所得の種類を利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得及び雑所得の10種類に分類して規定し、それぞれの所得種類ごとに別々の計算式により所得を計算し、かつ、その各所得金額を合計することにより各個人の担税力の大きさに応じた課税をしています。
また、基本は総合所得税としつつも、特定の種類の所得を他の種類の所得と合算せず、分離して課税する分離課税も超過累進税率の緩和を目的として適用されています。
2 超過累進税率の適用
所得税の税率は、所得の大小に関わらず一律に一定税率を課する比例税率でなく、所得が増加するにつれて、その増加部分に、順次、高い税率を適用するという制度を採っています。これを「超過累進税率」といいます。したがって、所得の大きい者ほど金額においてはもちろんのこと、その所得に対する割合において、より多くの所得税を負担することになります。このことから超過累進税率は、担税力に応じた税負担の配分の要請に最もよく適合されます。
なお、相続税等にも適用されています。
3 世帯構成、個人的事情の考慮
世帯構成と、家族の生活のための費用を考慮して、各人の所得のうち一定の金額が課税の対象から除外されています。控除の種類としては、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除及び基礎控除があります。
また、個人的事情を考慮して、所得の額が同じであっても、各人の置かれた状況によって税負担を軽減するための措置が採られ、雑損控除、医療費控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除及び勤労学生控除があります。
租税の理念として、最も重要なことは「負担の公平」ということであり、租税の負担が公平であるということは、納税者が各自の担税力に応じて租税を負担することです。したがって、租税は、各納税者の担税力を忠実に表示する指標を取り上げ、これを課税の対象とする必要があると思います。この考え方に最もよく適合しているのが所得税だと考えます。
と同時に、利益獲得手段の多様化、国際化、IT化が急速に発達していく中で、その徴税の執行が困難になっている状況もあるため、所得の把握体制の環境整備及び強化を図っていくことが今後の重要な課題とされています。
参照文献
・税大講本 所得税法(2019年度)版
コンパッソ税理士法人
渋谷事務所 吉田 匡史