仮想通貨(暗号資産)取引における課税関係と注意点について
2017年に過熱的な仮想通貨ブームとなり、巨額の富を得た方は当時「億り人」と呼ばれました。しかしその後、仮想通貨の取引所のハッキングによる信用不安から売りが売りを呼び評価額は大暴落し、その存在価値が問われました。現在はセキュリティと法整備が進み、大手企業や金融機関が参入したことで長期的に楽観視をしている保有者が増加し、仮想通貨の代表通貨であるビットコインの評価額はピーク時の半分にまで回復しています。
特にビットコイン自体は決済機能ではなく金同様価値の保存手段としての可能性が注目され、価格が今後再び大きく変動する可能性も出てきています。
利益が出た場合に確定申告をどうすべきかお悩みの方も多いかと思います。
そこで、簡単に課税関係と注意点をお伝え致します。
◎仮想通貨の売買で所得税がかかる3つのケース
(資金決済法の改正により決済手段として位置づけられたことにより2017年7月より消費税は非課税となっています。)
仮想通貨の売買、交換等の際に利益(所得)が発生すると、その利益に対して所得税がかかります。売買、交換等とは、以下が含まれます。
① 仮想通貨を法定通貨(円やドルなど)に交換する方法
② 仮想通貨同士に交換する方法(ビットコインとアルトコイン間、異なるアルトコイン間取引)
③ 仮想通貨と物を交換する方法(ビットコイン決済でPCを購入等)
※アルトコインとはビットコイン以外の仮想通貨の総称です。
◎仮想通貨取引の課税評価のタイミングはいつになるのか
現状での国税局の見解は「移動平均法」もしくは「総平均法」どちらかとしています。
評価方法はコインごとに選択可能ですが、届出が必要となります。
(届出をしない場合は全て総平均法を選択したものと見なされます。)
一旦どちらかを選択すると翌年から原則3年間は継続する必要がありますので慎重に判断して下さい。
移動平均法:仮想通貨を購入する都度、購入額と残高を平均し所得を計算する方法
総平均法:1年間の平均購入レートを出し、そこから総購入金額と、売却合計金額の差額(所得)を計算する方法
◎仮想通貨取引益は雑所得
日本の仮想通貨取引に対する個人の税金は所得税のうち、雑所得として分類されます。
雑所得は総合課税の対象となる為、給与所得等他の所得と合算して税率が決まります。
最大で住民税と併せて55%の税金が課される可能性もあります。
どの税率に該当するかは、以下の国税庁のページをご参照下さい。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
ちなみに、仮想通貨取引益に対する課税率ですが、他国はどうなっているのでしょうか?
米国:49.7 % ただし、一年以上保有で最高20%
スイス:個人投資家は免税
フランス:19 %
ドイツ:47.475 % ただし、一年以上保有で免税
オーストラリア:個人所得税と同率。ただし、一年以上保有で50%減税
マレーシア:免税
韓国:現在は免税 今後20%の課税予定
日本:55 %
(R2.9/30時点 最大税率)
御覧の通り、他の国と比べても日本が明らかに高くなっています。
ここが議論の争点になっています。日本暗号資産取引業協会及び日本暗号資産ビジネス協会を筆頭に申告分離課税にすべきだという動きが高まっており、そうなれば20.315%に引き下がります。ただ、直近の金融庁の令和3年度 税制改正要望では暗号資産取引に関する事項は盛り込まれませんでしたので税率は令和3年度も同様になる可能性が高くなっています。
以上、仮想通貨取引で得られた利益に対する課税のお話でした。仮想通貨取引で利益を得た方は、申告漏れのないように今から取引記録をしっかり保管しておきましょう。
参照<財務省HP>
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/itn_comparison/j02.htm
横浜青葉事務所 岡野幸雄