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”1,000万円以下事業者”のインボイスの登録と登録キャンセルの注意点

令和3年10月1日より、適格請求書発行事業者の登録申請の受付が開始されていますが、検討課題として免税事業者による登録申請と登録取りやめ(免税事業者に戻る)が想定されます。今回は、令和4年4月の消費税法一部改正の内容とその影響による留意点をまとめます。

1.改正の概要

基準期間等の判定により免税事業者となる事業者が、適格請求書発行事業者の登録申請を行う場合、原則として、「消費税課税事業者選択届出書」(以下、「課税選択届出書」といいます)を提出し、課税事業者となる必要があります。

ただし、経過措置(平成28年改正法附則44④)の適用により、インボイス制度が開始する令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする場合には、免税事業者であっても「課税選択届出書」の提出を行うことなく登録申請書の提出のみで登録を受けられます。

この結果、免税事業者は、適格請求書発行事業者の登録日(以下、「登録日」といいます)において自動的に課税事業者へと切り替わるため、「課税選択届出書」の提出手続きを省略することができます。なお、当該経過措置の適用を受けた場合には、課税期間の中途であっても登録を受けた日から課税事業者となり、令和5年10月1日以降の取引において消費税の申告が必要です。

令和4年度改正では、この経過措置の適用期間が延長されております。改正後は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間においては、「課税選択届出書」の提出を行うことなく登録が可能です。

2.登録の取りやめ手続き

適格請求書発行事業者は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」(以下、「登録取消届出書」といいます)を提出することにより、適格請求書発行事業者の登録を取り消せます。

この場合、原則として、「登録取消届出書」の提出があった日の属する課税期間の翌課税期間の初日に登録の効力が失われることになります。ただし、「登録取消届出書」を、その提出のあった日の属する課税期間の末日から起算して30日前の日以降、その課税期間の末日までの間に提出した場合は、その提出があった日の属する課税期間の翌々課税期間の初日に登録の効力が失われます。個人事業主の場合は、12月1日までに「登録取消届出書」を提出すれば翌年1月1日から消費税の免税事業者になります。

3.登録の取りやめにより免税事業者に戻る場合

「課税選択届出書」を提出している事業者が、「登録取消届出書」の提出により適格請求書発行事業者の登録の効力が失われた後の課税期間について事業者免税点制度の適用を受ける(免税事業者となる)ためには、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税課税事業選択不適用届出書」を提出する必要があります。

ただし、免税事業者が上記1の経過措置により、「課税選択届出書」を提出せずに事業者免税点制度の適用を受けない(課税事業者となる)こととなったときは、免税事業者に戻る場合に「消費税課税事業選択不適用届出書」を提出する必要はないことになります。

4.登録の取りやめに関する期間制限

適格請求書発行事業者の登録を受けている事業者が、登録を取りやめることについては、特に制限は設けられていないため、登録の効力が生じている課税期間の末日から起算して31日前までに「登録取消届出書」を提出すれば、翌課税期間には登録事業者でなくなることが可能です。

ただし、上述の令和4年度税制改正により、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受ける場合に、「課税選択届出書」の提出をしないでその登録日から適格請求書発行事業者となるとする経過措置の適用が令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に延長されたことに伴い、当該経過措置の適用を受けて登録日から課税事業者となる適格請求書発行事業者のうち、令和5年10月1日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間にこの経過措置の適用を受ける場合には、原則としてその登録日の属する課税期間の翌課税期間からその登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、事業者免税点制度を適用しない(課税事業者となる)こととされています。

改正後の経過措置の適用を受けた場合は「登録取消届出書」を提出して適格請求書発行事業者ではなくなったとしても、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間については、基準期間における課税売上高や特定期間における課税売上高にかかわらず、強制的に課税事業者となることに留意が必要です。個人事業主の場合、課税期間は1月1日~12月31日となります。例えば令和6年1月にインボイスの登録を行うと、その後登録取消届出書を提出しても令和8年中は消費税を支払わなければなりません。

(登録に係る経過措置「平成28 年改正法附則 44④、インボイス通達5-1」)
免税事業者が登録を受けるためには、原則として、消費税課税事業者選択届出書(以下「課税選択届出書」といいます。)を提出し、課税事業者となる必要がありますが、登録日が令和5年10月1日の属する課税期間中である場合は、課税選択届出書を提出しなくても登録を受けることができます。

(出典:国税庁HP)

渋谷事務所
丸山 浩史

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