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役員賞与の活用による社会保険料の節約

役員報酬の受取り方次第で、年収は同じでも社会保険料が安くなる場合があります。

社会保険料が安くなる理由は、賞与に対する社会保険料には上限が設けられているためです。
(協会けんぽの場合:健康保険料の上限額573万円、厚生年金保険料の上限額150万円)
その上限額を超えるように役員賞与を設定することで社会保険料の節約が見込まれます。
それでは、どのくらい安くなるのか実際にシミュレーションしていきます。

例)年収1,200万円の役員の場合(東京都)

〇役員賞与の活用なし
・役員報酬月額100万円
年間健康保険料:1,173,648円
年間厚生年金保険料:1,427,400円     合計2,601,048円

〇役員賞与の活用あり
・役員報酬月額40万円
年間健康保険料:491,016円
年間厚生年金保険料:900,360円

・役員賞与720万円
(健康保険料の上限額573万円 厚生年金保険料の上限額150万円)
健康保険料:573万円×9.98%(保険料率)=571,854円
厚生年金保険料:150万円×18.3%(保険料率)=274,500円
                              合計2,237,730円

シミュレーションの結果、このケースでは年間で約36万円の節約ができました。

★注意点
役員賞与の設定には注意すべき点が2つあります。

1. 事前確定届出給与に関する届出の提出
役員に対して賞与を支払う場合は、所定の時期に決められた金額を支払うことを定め、事前に税務署に届出をすることで、損金算入することができます。届出の提出をしていなかった、届出に記載した支給日・金額で支払うことができなかった場合には、役員賞与を損金算入することはできないため、注意が必要です。
届出の提出期限は、「事前確定届出給与を定めた株主総会などの決議をした日または職務を開始する日から1か月以内」「会計期間開始の日(事業年度開始の日)から4か月以内」のいずれか早い方と定められています。また、新規に会社を設立した場合には、設立日から2か月以内が提出期限となります。なお、毎年役員賞与を設定する場合は毎年の提出が必要です。

2. 支給金額の設定
役員報酬は法人税法第34条第2項により、「政令で定める不相当に高額な部分の金額は損金不算入」という規定がされていますので、過大な役員賞与によって法人税の引き下げができないこととされています。不相当であるかどうかは、「実質基準」と「形式基準」の2つの基準から判断されます。

・実質基準
 役員の職務内容や会社の業績、従業員・同業種の支給状況などを勘案し、
 職務内容に応じた報酬になっているか、その会社の従業員・同業種の報酬額と比べて
 高額すぎないか、という視点がポイントになります。

・形式基準
 株主総会などで決めた役員報酬の限度額を上回っていないかということです。
 決議し、議事録などに記載した金額に従うことで基準を満たしていることになります。

最後に
役員賞与の制度を適切に活用することで、社会保険料の節約だけでなく、役員のモチベーション向上、優秀な人材の確保と定着など、さまざまなメリットを享受することができます。ただし、役員賞与の支給には事前確定届出給与に関する届出の提出や適切な金額の設定が必須となるため、慎重に検討していくことが必要です。

横浜青葉事務所 小嶋勇也

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