「簿記」という言葉、「会計」という言葉
「簿記」という言葉が誕生したのは明治時代の初期のことだそうです。西洋から複式簿記を取り入れる中で、「book keeping」の訳語として誕生した、という説が一般的です。なお、「ブックキーピング」と「ぼき」は発音としては似ていますが、これは一説に寄ると偶然に過ぎないようです。
現在では「簿記」という言葉は、一般に複式簿記を意味します。14~15世紀のベネチア商人が発明したと考えられているこの簿記ですが、イタリア人数学者で近代会計の父のルカ・パチョーリが通称“スンマ”と呼ばれる書物(1494年出版)の中で紹介しています。簿記は、この頃に爆発的に広まっていったものと考えられています。
ちなみに、弊社の名称である、『コンパッソ』はイタリア語で方向性を与える(羅針盤)を意味する言葉です。
「会計」という言葉が日本で用いられるようになったのも同じ頃と言われています。一見すると「accouting」の訳語として誕生したと考えられがちですが、実は「会計」という言葉は中国の古典にも出てくる非常に歴史のある言葉です。四書五経の一つにも数えられる孟子の中に、「孔子が嘗て委吏(穀物の倉を管理する役人)となり会計に当たる」という記述があり、もしかすると、歴史上、確認出来る最古の会計人は孔子なのかもしれません。この中で使われている会計という言葉は、一年の収入支出の「しめくくり」であり、金穀の出納を計算するという意味合いのようです。
明治政府が始めに使ったのは明治元年(正確には、9月から明治と改元されました)の一月に中央管制の一部として、「会計」という課が設けられ、何度かの体制・名称変更の後、明治2年に大蔵省(現在の財務省です)が設置されました。当初は、「会計」という言葉を「財政」の意味で用いていたようです。
このように、「会計」という言葉は官庁会計から用いられましたが、「企業会計」の意味で使われるようになったのは明治40年頃になるようです。
何気なく日常使っている言葉や、専門用語の歴史も、調べてみると面白い発見があります。
東京練馬事務所 古田一成