相続した不動産の登記をお忘れなく
国税庁HPより令和2年12月に公表されました令和元年分の相続税の申告事績の概要によりますと、令和元年分における被相続人数(死亡者数)は1,381,093人(前年対比101.4%)でした。そのうち相続税申告書の提出に係る被相続人数は115,267人(同99.1%)で、その課税価格の総額は15兆7,843億円(同97.2%)、申告税額の総額は1兆9,754億円(同93.7%)でした。
相続税の申告書の提出に係る被相続人数はやや減少という結果となりましたが、被相続人数は増加しており、今後も相続が我々の身近な存在となるのだということが分かります。
被相続人の相続財産に不動産がある場合の相続登記等について、民法など関連法案の改正案を令和3年3月5日の閣議にて決定しましたのでご紹介致します。
政府は5日の閣議で、所有者不明土地問題を解決するため民法など関連法の改正案を決めました。土地の相続や所有者の住所を変更した際の登記申請を義務化し、違反した場合は過料を科すというものです。管理が難しくなった土地を国庫に返納できる制度を新設し、持ち主が誰かわからない土地の管理を強化するとしました。
所有者不明土地とは、「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」です。このような事態となっている原因は、相続登記や変更登記が放置されているからです。その中でも相続登記の不備は全体の6割超にも及びます。国土交通省の2017年の調査によると、全国の土地の2割で所有者が分からないそうです。
これ以上所有者不明土地を増やさない為に、これまで任意だった相続と住所変更の登記申請を義務化することになりました。相続は土地の取得を知ってから3年以内、住所変更は2年以内に申請しなければならず、違反すれば相続は10万円以下、住所変更は5万円以下の過料が課されます。
また、相続人のうち1人が単独で申請できるよう面倒な手続きを簡略化したり、相続した土地の管理が難しい場合に一定の条件を満たすときには土地を国庫に返納できたり、複数の人が所有している土地や建物の一部で所有者が分からない場合にも改修や売却ができたりなど、変更登記を行いやすくする制度も新設するようです。
これらの制度は、行政のシステム変更が必要になるため、相続登記の義務化は3年以内、住所変更は5年以内に施行するとのことです。
何世代にも渡って相続登記等を先延ばしにしている場合には正しい登記内容に変更するまでにかなりの時間と労力を要することになります。改正法が施行されるまでに早目の対策を行いましょう。
出典:国税庁HP 令和元年分相続税の申告事績の概要
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2020/sozoku_shinkoku/index.htm
日本経済新聞 2021年3月5日「相続登記を義務化 所有者不明と土地対策、関連法案を決定」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE046WL0U1A300C2000000/
千葉流山事務所
小川裕太