合同会社の職務執行者について
国際事業部は外国会社の日本進出のサポートを行っていますが、とりわけ近年は日本法人を設立された米国籍企業のすべてが合同会社を選択されています。
当コラムでは合同会社とその特徴について詳しい説明を省略しますが、米国本国において税務上のメリットがあることに加え、決算公告や役員改選(登記)の必要がないこと、権限や利益配分を任意に設定できるなど意思決定について迅速かつ自由度が高いことも理由として挙げられるでしょう。
株式会社と比べてまだ広く一般に認知されているとはいえない合同会社ですが、アップルやアマゾン、グーグルなどの名だたる企業が合同会社なのをご存じの方も多いのではないでしょうか。
合同会社は法人でも社員になれますので、親会社が社員=業務執行社員になる場合は当該法人に代わって実際にその業務執行を執り行うべき自然人を選任することになり、この個人のことを職務執行者といいます。
職務執行者には親会社の役員や、弁護士等の第三者が就任していることもしばしばですが、進出に際して新たに日本で採用された従業員(使用人)が単独で登記され、その職を兼任することがあります。
仮に他の従業員を束ねる高位役職者であっても、株式会社の取締役のようないわゆる役員ではなく、執行役員をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
さて、このような従業員=使用人でありながら職務執行者を兼務する(先に述べた通り、税務上の役員ではないものとします)方は、通常の手続きでは労働保険の加入を認められないものと思われますので、同様の形態を取らざるを得ない場合に待遇面の配慮が重要なのはもとより、こういった不利益についても前もって説明し承諾を得ることも必要です。
労災については特別加入という制度がありますが、雇用保険についてはカバーされませんので、多様な実務に精通した専門家に相談するのがよいでしょう。
他国への進出に際しては、どんなに時間をかけても知りえないことも多く、些細な事柄でも慣れない作業や手続きに戸惑うものです。
コンパッソでは税理士法人と社会保険労務士法人ほか同じグループ各社および専門家が協働して外資系企業をサポートしていますので、お困りの際はぜひお問い合わせください。
国税庁:役員の範囲 https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/5200.htm
厚生労働省:「令和2年度労働保険年度更新申告書の書き方」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/2019/dl/keizoku-all.pdf(8頁「4.労働保険対象者の範囲」
国際事業部
弘中 孝一