M&Aで会社を売却した場合の手取額
ひと昔前までの中小企業の事業承継については、お子様が引き継ぐなどの親族内承継が選択肢の大部分を占めていました。しかし、最近では少子化や時代背景の変化により、親族内承継が出来ないケースも増えてきています。このような状況の中、中小企業においても外部承継としてM&Aを選択するケースが増えています。
中小企業のオーナー様にとっては、M&Aはあまりなじみがないため、様々な疑問が生じることと思います。その疑問の1つとして、M&Aで会社を売却した場合に、はたして手取額はいくらになるのだろうか?という疑問があるのではないでしょうか。
今回は、中小企業のM&Aで最も一般的な株式譲渡を例に、M&Aにおける手取額をご説明したいと思います。
〇 M&Aの支出
M&Aで会社を売却する場合に発生する主な支出は、①株式譲渡に係る経費と②譲渡所得に対する税金に大別されます。
【①株式譲渡に係る経費】
M&Aアドバイザーに支払う手数料で、依頼するアドバイザーや規模にもよりますが、株式譲渡価格の5%程度を手数料として支払います。
【②譲渡所得に対する税金】
株式譲渡に伴う利益に対して、一律で20.315%(所得税等15.315%+住民税5%)が課税されます。これは給与などの累進課税(収入が多ければその分税率も上がるもの)と違い、株式譲渡に伴う利益が多額になっても税率は一律20.315%です。売却するオーナー様にとっては有利な税制となっています。
〇 具体例
1.株式譲渡収入 500百万円
2.株式譲渡経費 25百万円(500百万円×5%)
3.取 得 費 25百万円(譲渡収入×5%の概算取得費を採用)
4.株式譲渡利益 450百万円(収入-経費-取得費)
5.税 金 91百万円(譲渡利益×20.315%)
上記具体例の場合のオーナー様の手取額は384百万円(収入-経費-税金)となります。
〇 まとめ
上記具体例は、わかりやすくお伝えするためにシンプルに記載しましたが、実務においては、退職金と組合わせ、より手取額を多くする工夫をします。具体例のように500百万円の収入を全額譲渡収入でもらうのではなく、例えば、譲渡収入300百万円+退職金200百万円とすることで、負担する税金が減り、手取額が多くなる場合があります。この金額のバランスは、様々な要素を加味して試算する必要があるため、専門家のアドバイスが必要となります。
中小企業のオーナー様にとって、M&Aで会社を売却して、いくら手元に残るかは、会社売却後の生活や、お子様に会社ではなく財産を残すという意味で、とても大切なことです。今回は手取額についてご説明しましたが、M&Aでお悩みの場合には是非ご相談下さい。
東京事務所
福田 訓久