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高年齢者を雇用する際のルールや支援についてご紹介

多くの企業で定年を60歳と定めていますが、近年は心身ともに元気で意欲的に働く高年齢者が増えています。知識や経験値が高い貴重な人材であり、積極的に雇用する事業者もあるでしょう。

事業者が高年齢者を雇用したい場合、いくつかのルールがあります。

今回は高年齢者を雇用するにあたってのルール、事業者に対する支援策のほか、必要な届け出などについてご紹介していきます。

高年齢者を雇用するためのルール

高年齢者を雇用するルールは、高齢者雇用安定法に基づいています。高齢者雇用安定法は2013年4月1日に改正され、昨今の高齢化社会のニーズに寄り添ったものとなりました。

60歳以上を定年とする
高年齢者雇用安定法第8条により、事業主が従業員の定年を定める場合、60歳以上としなければいけません。ただし、厚生労働省が定める業務で高年齢者が従事するには困難だと認められる業務については適用外となります。

高年齢者雇用確保措置
高年齢者雇用安定法第9条により、事業主が定年を65歳未満と定めている場合、下記の措置をとる必要があります。

・65歳までの定年の引き上げ
・65歳までの継続雇用制度の導入
・定年の廃止

継続雇用制度は、定年後も本人が希望すれば引き続き雇用する再雇用制度です。高年齢者雇用安定法の改正によって、対象が労使協定での基準で認められた従業員のみから、グループ会社を含む希望者全員となりました。

高年齢者雇用に関する届け出について

高年齢者を雇用するにあたり、事業主はハローワークに必要な書類を申請する必要があります。

高年齢者雇用状況報告
高年齢者雇用安定法52条第1項により、常用労働者数が31人以上の事業者は、高年齢者雇用状況報告の対象事業所となります。管轄のハローワークから報告用紙が送付されるので、必要事項を記入して申請します。なお申請方法は郵送、持参のほか電子申請でも可能です。

報告を行わなかった場合法的罰則はありませんが、法律で報告をすることが義務づけられているので必ず申請しましょう。

多数離職届
高年齢者雇用安定法第16条により、1か月以内に45歳以上65歳未満の中高年齢者等が、5人以上離職する場合は「多数離職届」をハローワークに提出しなければいけません。

事業者への支援策

高年齢者を積極的に雇用する事業者に対し、国は助成金による支援を行っています。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
ハローワークなどの紹介で、雇用保険の一般被保険者として、60歳以上65歳未満の高年齢者を継続して雇用した場合、事業主に対して助成金が支給されます。

支給額は、一週間の所定労働時間が、20時間以上30時間未満の短時間労働者で40万円、短時間労働者以外は60万円です。

特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
ハローワークなどの紹介で、雇用保険の一般被保険者として、65歳以上の高年齢者を1年以上継続して雇用することが確実である事業主に対して助成金が支給されます。

支給額は、一週間の所定労働時間が、20時間以上30時間未満の短時間労働者で50万円、短時間労働者以外は70万円です。

65歳超雇用推進助成金
65歳を超えても、能力のある高年齢者が意欲的に働くことができる社会を目指すための助成制度です。

内容は定年を65歳以上に引き上げたり、高年齢者の雇用管理制度の整備、また雇用期限のある高年齢者に対し無期雇用に転換したりするなどを行った事業主に対し、助成金を支給します。

高年齢者個人への支援策

高年齢者雇用に関しての支援は事業者だけではありません。高年齢者本人に対しても、雇用を支援する給付金が支給されます。

高年齢雇用継続給付金
60歳を超えても意欲的に働く高年齢者が、60歳時点と比較した賃金が75%未満である場合に給付金を支給する制度です。支給手続きは事業主を経由して行うため、従業員が申請してきた際には、滞りなく手続きが行えるようにしましょう。

給付金を受給するためには以下の条件を満たしている必要があります。

・60歳以上65歳未満の雇用被保険者であること
・5年以上継続して雇用保険に加入していること
・受給する際の賃金が60歳時点と比較して75%未満であること

給付金額の計算式は以下の通りです。なお、給付額はいずれも月額です。

低下率61%未満
給付額=60歳以降の賃金×15%

低下率61%~75%未満
給付額=(60歳以降の賃金 × -183/280)+(60歳到達時の賃金月額 × 137.25/280)

なお、高年齢雇用継続給付には上限と下限に支給限度額があり、毎年8月に改定されます。2020年8月からの限度額の上限は479,100円、下限は77,200円とされています。また、高年齢雇用継続給給付金は2025年度から、段階的に引き下げられていくことが決定しています。

まとめ

高年齢者になると身体能力が低下し、長時間労働が困難であったり、疾病のリスクがあったりと、働き盛りの若者と同じように雇用することは、事業主にとって不安な部分もあるでしょう。

しかし知識や経験が豊富な人材は、頼りがいがある貴重な存在であり、高年齢者を雇用することは事業者にとってのプラスとなります。国からの助成金などを利用し、積極的に高年齢者を雇用することで、事業者にとって大きな労働力の確保につながるでしょう。

また、高年齢者が安心して仕事ができるように事業者は給付金の申請を忘れず行いましょう。労働環境を整えることで、事業者は労働力を提供してくれる高年齢者を長期にわたって支援できるでしょう。

(画像は写真ACより)

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