積立金を給与から強制的に控除するのは禁止?!給与から控除してOKな控除項目とは
賃金は労働者に全額支払わなければいけない
労働基準法の賃金支払い5原則の1つに「全額払いの原則」があります。これは、法令で定められた税金や保険料など以外は、賃金から控除してはいけないという原則です。一見、常識のようにも思える「全額払いの原則」ですが、労働者と企業の認識が一致せずに問題となることがあります。
給与から天引き可能な控除項目には何があるのでしょうか。あなたの会社は、本来控除してはいけない項目を給与から天引きしてしてませんか。今回は、給与の控除項目について見ていきます。
社会保険
社会保険には「健康保険」、「厚生年金保険」、「介護保険」があります。
「健康保険」は、労働者とその家族が病気やケガをしたときなどに、医療給付や手当金などの支給を受けることができる制度です。病院にかかる際に保険証を持参することで、3割負担で治療を受けることができるのは「健康保険」のおかげです。保険料は使用者と労働者が折半で負担するため、保険料総額の半額が給与から天引きされます。
「厚生年金保険」は、労働者が高齢や病気、ケガなどが原因で働けなくなった場合に、保険給付が受けられる制度です。地方公務員、法人の事業所、常時5人以上を雇用する個人事業所において、原則加入することが義務付けられています。「健康保険」と同様、保険料は使用者と労働者の折半となっています。
「介護保険」は40歳以上が加入する保険で、加齢に伴う疾病などにより要介護(要支援)認定を受けた際に介護サービスを受けることができます。
65歳以上を対象にした第1号被保険者と、40歳から64歳までの第2号被保険者に分けられ、第1号被保険者は、原因を問わず要介護状態または要支援状態になった場合に介護サービスを受けられるのに対し、第2号被保険者は、要介護(要支援)状態が、老化による疾病(特定疾病)に起因する場合に限り、受給可能です。
労働保険
労働保険は「雇用保険」と「労災保険」の2種類があります。
「雇用保険」は、失業した労働者が生活の安定と再就職につなげることを目的としています。1週間の所定労働時間が20時間以上かつ、31日以上雇用見込みがある全労働者が対象となります。保険料は労働者と使用者双方が負担します。
「労災保険」は、業務や通勤途中の事故などが原因で、労働者がけが、病気、死亡した場合に給付が行われる制度です。雇用形態を問わず、全労働者が対象となり、保険料は全額使用者が負担します。そのため、「労災保険」については給与から控除されることはありません。
所得税
所得税は、労働者の代わりに会社が国に納付する税金です。所得税が給与から天引きされることを「源泉徴収」と呼びます。
年末調整によって、控除額よりも還付金が多い場合は、会計上はマイナス支給となり、労働者に還付金が支給されます。
住民税
住民税は、労働者が居住している市区町村に納める税金です。所得税同様、会社が給与から天引きして市区町村に納付します。
交通費
交通機関や、自動車、自転車を使用して通勤している場合は、会社の規定による交通費が支給されますが、ケガや病気などによって長期間休んだ場合は、総支給額×休んだ日割り分が控除される可能性があります。
控除してはいけない項目
給与から控除される項目がある一方で、控除してはいけない項目があります。
たとえば、労働者にお金を前貸しし、返済金として給与から一方的に控除することは労働基準法で禁止されています。また、社員旅行などのために、強制的に積立金を天引きすることもNGです。
ただし、>労使協定があれば、社宅や寮費、福利厚生費用など、内容が明確な項目については控除することができます。
まとめ
賃金支払い5原則の1つに「全額払いの原則」があり、労働者のための項目であっても、何でも給与から控除して良いわけではありません。
あなたの会社は労使協定を結ばずに、積立金や寮費などを控除していませんか。この機会に、自社の控除項目についてもう一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
(画像はphoto ACより)