副業している従業員の健康管理 本業の会社が行うべき?
本業+副業での働き過ぎには十分注意
最近では副業を認める企業が増えてきましたが、それに伴って、本業と副業を合わせた労働時間が長くなる場合があるため、働き過ぎによって労働者が健康を損ねてしまうことも十分に考えられます。
この場合、健康を損ねた原因は労働者が無理をしてまで本業と副業の両方に取り組んだことといえますが、会社側としても副業を行うことを前提として、無理なく働ける環境をつくることが大切です。
従業員の安全管理は会社の義務
従業員が副業を行っている場合の安全配慮については、本業を行っている会社の義務となります。
労働契約法第5条では、以下のとおり「安全配慮義務」に関する内容が記載されています。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
(引用:労働契約法)
確かに、従業員が副業を行わず一社のみで業務を行っているのであれば、従業員の健康管理など安全に配慮することは義務といえるでしょう。
しかしながら、従業員が自社で本業を行い、他社で副業を行っている場合は、他社で副業を行っていることに関しては健康管理の義務は負わなくても良いように感じられます。
ただし、会社側が従業員の副業について把握しているにもかかわらず、従業員に残業を求めたり休日出勤を求めたりすることは、従業員にとっては副業を行いにくい環境となってしまいます。
場合によっては、本業の負担が大きすぎて副業先での業務に支障が生じることがありますが、このような状況になると副業のみならず本業にも影響が生じかねません。
そのようなことを防ぐためにも、従業員が副業を行っていることを把握している場合は、従業員に対する安全配慮は義務といえるのです。
従業員の労働時間を正確に把握して安全を確保
副業を行う従業員の安全を確保するために会社側が行うべきこととしては、従業員の労働時間を正確に把握することです。
従業員の労働時間の把握は、従業員の安全配慮につながるのはもちろんですが、それに加え、会社側としても従業員の働かせすぎによる責任追及のリスクを軽減することができます。
例えば、副業を行っている従業員が長時間にわたって時間外労働を行っている場合、副業に支障が生じることになります。また、会社での長時間労働に加え、副業先でも業務を行った場合、一日の労働時間は非常に長くなるため、体調不良の原因にもなりかねません。
この場合、本業側の会社は、従業員の副業を把握していたにもかかわらず時間外労働を行わせたことになり、従業員の体調不良の原因は本業側の会社にあるという見方をされてしまいます。
このことから、会社としては従業員の労働時間を正しく把握することが従業員を守ることにつながり、ひいては会社を守ることにもつながるのです。
届け出制にして副業によるトラブルの防止を
副業に対する会社の方針としては、完全な許可制、届け出を行ったうえでの許可、副業の禁止があります。
完全な許可制とは、従業員が副業を行う場合、会社に対して届け出を出さなくても副業が認められる形です。そのほか、会社に副業を行う届け出を行い、会社からの許可が下りた時点で副業を行えるケースもあります。
従業員としては、完全な許可制の方であれば自由度が高く、副業を行いやすいといえますが、副業を行うにあたって種々のトラブルを防ぐのであれば、届け出制にして会社の許可が必要な形にしておくと良いでしょう。
その理由としては、届け出制とすることにより、会社側が従業員の副業の状況を把握しやすくなり、従業員の安全配慮を容易に行えるようになるためです。
これにより、社内では時間外労働や休日出勤などを制限することができ、副業を行いやすい環境が実現します。また、副業先で時間外労働が日常化し、本業に支障が生じていると判断した場合は、副業を制限したり、あるいは禁止としたりすることも可能となります。
良い仕事を行うための基本は「体が資本」であることです。本業に加えて副業を行おうとする気力も大切ではありますが、肝心の体力が続かなければ本業も副業も共倒れになりかねません。
従業員がそのような状態になってしまうことを防ぐためにも、企業としては副業を行う従業員の安全を配慮する義務があるのです。
(画像は写真ACより)