全面的に禁止するのは違法?就業規則で副業について規定するポイントチェック!
副業や兼業を希望する労働者が増加中
総務省「就業構造基本調査」によると、副業や兼業を希望する労働者は年々増加し、2012年には就業者全体の5.7%が副業を希望しているという結果が出ています。一方で、就業規則等で副業・兼業を禁止している会社は依然として多く、会社の規定と労働者の希望が一致していないのが現状です。
株式会社リクルート キャリアの「独立・開業」をサポートするサービス「アントレ」が実施した「兼業・副業に対する企業の意識調査(2017年1月に実施)」によると、副業・兼業を容認・推進している企業は全体の22.6%で、禁止している企業(77.2%)を大きく下回りました。
なぜ、会社は従業員の副業・兼業を禁止しているのでしょうか。従業員の副業・兼業は会社にとってマイナスなのでしょうか。ここでは、副業・兼業の考え方と、就業規則等で規定する際のポイントを見ていきます。
副業禁止はもう古い?!
厚生労働省は、平成29年3月28日に実施された働き方改革実現会議での決定事項を踏まえ、副業・兼業の普及促進に努めています。平成30年1月には、ホームページ上で公開している「モデル就業規則」内の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」を削除し、勤務時間外は労働者が副業・兼業できる旨を明記しています(第14章 第68条)。
副業・兼業は、労働者にとって、収入アップ、低リスクでの起業、主体的なキャリア形成などのメリットをもたらします。一方で企業にとっても、社内では得られなかった新しい知識や情報、人脈などを得ることができたり、主体性のある人材が集まりやすくなったりするなどのメリットがあると考えられます。
副業を就業規則で規定する際の注意点
「アントレ」が実施した「兼業・副業に対する企業の意識調査(2017年1月に実施)」によると、副業・兼業を禁止している企業の多くが、社員の長時間労働・過重労働の助長や、情報漏洩などを懸念しています。
現在のところ、民法や労働基本法などの法律において副業・兼業に関する規制はありません。しかし、裁判所は、副業・兼業関連の労働問題のほとんどで、労働者が労働時間外の時間をどのように利用するかは、労働者の自由であるとの判決を出しています。
そのため、企業は全面的に副業・兼業を禁止するのではなく、業務に支障がある場合や、会社に不利益をもたらす場合などに限り、副業・兼業を禁止、制限することが推奨されます。
厚生労働省の「モデル就業規則」では、副業・兼業を認める記述がある一方で、会社に不利益がある場合などは、副業・兼業を禁止又は制止できることが明記されています。
就業規則等には、会社の情報が外部に漏れてしまった場合、会社の名誉を傷つける言動があった場合、会社との信頼関係を壊すような行為があった場合などは、労働者の副業・兼業をただちに禁止、制止できる旨を記しておくと良いでしょう。
労働者は副業・兼業することによって就業時間が長くなりすぎないようにし、健康管理に努める必要があります。また、会社に不利益をもたらさないよう、就業時間中は本業に集中し、企業秘密は外部に漏らさないようにしなければいけません。会社とのトラブルを避けるため、競業する業務に従事すること避けた方が良いでしょう。
公務員の副業・兼業は原則NG
憲法第15条に「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」定められており、地方公務員、国家公務員ともに、副業・兼業は原則禁止とされています。
地方公務員法第38条、国家公務員法第103条においても、企業に就職して営利を得ることや、営利を目的として起業することなどを禁止しており、違反した場合は処罰の対象になります。
まとめ
社会の変化とともに、多様な働き方が求められるようになってきました。厚生労働省も副業・兼業を推進している中、企業が明確な理由なく、副業・兼業を禁止したり、副業・兼業をしたことにより一方的に解雇したりすることは違法と見なされる場合があります。
会社に届け出をしたうえで、業務に支障がない範囲であれば副業・兼業をOKとしていくことが推奨されます。就業規則等を改正し、労働者、会社、両者にメリットがある働き方を確立していきましょう。
(画像は写真ACより)